いちごミルクパン

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「俺とお前は、対等でありたいから。奢りとか、やらなくていいって。」
出会った頃のこいつの台詞。
 なぜか、ふと思い出した。

 かく言う今、俺はその友達に昼食を奢っている最中である。
 計1067円。冗談じゃねえ。
 俺は、数点のパンやら菓子やらの入った袋をぶっきらぼうに差し出した。
「さんきゅ。」
笑顔で受け取りやがる。そして袋をガサガサし、無駄に綺麗な手でつまんだ、かつて5円だったチョコを差し出した。はいプレゼント、と。

 ああ、そうか。これだ、この一口にも満たないようなチョコが、少年時代を想起させたのか。
「俺が買ったんだよ。」
 どういうわけか、その1粒が嬉しかった。



               題:遠い約束

4/8/2025, 10:39:35 AM