プレゼント
私はクリスマスプレゼントはもらった事が無い。
小さい頃は、他の子供が羨ましく、
親に隠れて、もみの木を折り紙で作ってみたり、靴下を枕元に置いてみたりしたが
サンタさんは来なかった。
誕生日プレゼントも、父も母も兄も選ぶのがめんどくさいので、
「金のが良いだろう。」
と、お金を渡される。
好きな物を買えて嬉しいかと思うだろうが
正直、寂しい。
私の為に使ってくれた時間と手間が何より嬉しいのに……。
子供の頃は自分で買い物ができないので、さすがにくれたが、
いつも、
「めんどくさい、お前はめんどくさいね、誕生日当日じゃなきゃいけないとか、バカじゃないの、遅れても良いじゃない!」
と、母に言われた。
誕生日のお祝いがめんどくさいとは、存在がめんどくさいと言う事ではないか……絶妙に嫌な事を言う。
私は人一倍欲が深い子供で、欲しくて欲しくてギャン泣きした。
まさに、めんどくさい悪い子である。
サンタさんより、ブラックサンタさんに拐われないだけでもありがたいと思う。
そういえば、高校時代に待っていたファウストの悪魔も来なかった……めんどくさいからかも知れない。
私は自分がプレゼント魔になった。
対人恐怖症なので、ものすごい他人に気を使って、
常に
「喜んでいただけましたでしょうか?」
と思う。
他人が喜んでくれると、物凄く嬉しい。
しかし
プレゼントで大失敗した事がある。
私はおばさんになっても独身である。
子宮に巨大な腫瘍ができたのを手術してもらった婦人科の先生に物凄く感謝したので、
ちょくちょく、お菓子等をプレゼントさせていただいたのだが( 貧乏なので少し )
二月の診察後、小さなチョコレートをお渡しした瞬間
険しい表情になった
「わざわざ、どうも!」
今まで気さくに話してくれていた先生の態度が一気に急変し、冷たく、事務的になった。
陽性転移( 恋愛感情 )を疑われて、距離を取られてしまったのだ。
悲しくて泣いた。
私は、その先生を第二のお父さんのように思っていたのだ。
『仮面ライダー』で、ショッカーと言う悪の組織に
拐って来た人間を怪人として改造する博士がいるのだが、
私も改造人間になって、第二の人生を生きている空想をしていたのだ。
その先生が病院を辞める日、事務的だったのに急に
「結婚するなら、優しい人じゃないと意味無いから!優しく無い男と結婚するな!じゃなきゃ結婚なんか、今更、意味無いよ!」
と、浪花節のようなお説教口調で、猛烈に怒ってくれたのは、嬉しかった。
最後に私の為を思ってくれて、助言のプレゼントをありがとう博士。
あなたはやっぱり私の第二のお父さんとして心に大事にしまっておきますね。
さようなら。元気でいてね。
私も怪人として仮面ライダーに倒される日まで頑張ります。
めんどくさい怪人より。
ゆずの香り
昨日私は、冬至だと言う事をすっかり忘れており
忙しくグッズイラストのデザインを手直ししていた。
母が仕事中の私にしつこく、かぼちゃを煮ると言い張るので
「手を切るとまた、血が止まら無くなって、
救急車騒ぎになるから!今日はやめて!
あ、間違えちゃったじゃんかよ!気が散る!もうー!
」
「あーら、私のせいじゃ、無いわよーうー!自分のせいでしょーが!」
意地悪な笑い顔の残像を残し
バターン!
と、扉を叩きつけるように下に行ってしまった。
「意地悪ババァ!」
つい、悪態をついた。
最近、どうして、こんなにわがままになったのか、MyMother、我がママとは言え、いつも、大事な仕事中に許せねぇよ!
私はキーッ!とヒステリックになりながら作業に戻って、なんとか間違えを修正し、
夕飯を作る時間までに必死に終わらせ
急いで台所に行くと
ホカホカのかぼちゃが煮えていた。
やっぱり煮たのか!
ふと、『書く習慣』のお題の更新を見ると
『ゆずの香り』
「あー冬至だから、かぼちゃ煮たかったのね?! なら、
そう、言ってよ!」
「今朝、言わなかったっけ…。」
母は私に説明をした『つもり』で毎日カンカンに怒る、
この間などは、頭を両手で抱えて鬼の形相をして唸っていたので
頭が痛いのか聞いたら
ずーっと、台所で何かしたくて、
私がずっと料理をしているのが気に食わ無かったらしく
「言ってよ!」
と、喧嘩になった
残念ながら、エスパー能力は持ち合わせていない……
事もないが( 長くなるのでまた今度)
そんなに気を使ってばかりいたら寿命が縮む。
その後、
銭湯に行くと、風呂場いっぱいにゆずの香りが漂っていて
お風呂のお湯には、洗濯ネット2つに切ったゆずがいっぱい詰まって浮かべてあり、
贅沢にもレモンスカッシュみたいな色になるまでジャボジャボにゆず果汁が入っていた。
顔見知りと、
「ゆず湯、嬉しいね!」
とニコニコしながら順番に入って、
母の背中と両手をマッサージして
さっきの喧嘩なんて無かったみたいに
なんとか今年も無事に冬至を乗り越えた。
1年で1番気が短い日みたいになってしまった。
意地悪ババァは自己紹介であった。
大空
先日、母が口から血を流した、これで3度目だ
9歳年上の兄が休みで血を流し続ける母の隣でテレビを見ている
一切、助けない。
怯えているだけである。
私が♯7119に電話する、繋がらない!
携帯で色々調べまくってやっと♯7119の別番号に電話が繋がり、
6件病院を紹介してもらった。
5件目で、3時間経過、看護師さんに
「3時間も経って出血が止まらないなら、大変!早く救急車を呼びなさい!」
結局、救急車を呼ぶ、
このご時世なので、口から出血位で、なんで救急車を呼んだかを詰問される、
経緯を言う、
「本当みたいですね。」
と、言われ、さっき断られた病院に受け入れて貰える事に……。
母は不安定狭心症の上に脊椎管狭窄症で
手足が不自由で痛みも酷いから全く動こうとしない。
その為、エコノミークラス症候群になってしまった。
その時から、血栓の予防に血液サラサラのお薬を飲んでいるので
ささいな怪我でも大出血してしまうのだ、
病院をタライ回しにされ、連日車椅子で病院へ私が連れて行く
高齢で、私にだけ認知症の症状が出る母は私に辛く当たる
兄も私に横柄な態度を取る
無給で掃除洗濯ご飯作り……そして邪険にされる。
「私は女中じゃないよ!」
思わず悲鳴を上げた。
なぜ、私だけが仕事もできず、家で介護を
しかも、兄には、
「楽しやがって。おれが会社を辞めて介護したい。」と、言われた事も有る。
役所の人にも
「お兄さんに介護してもらったら、お母さんも早く亡くなるから、あなたの人生を大事にしてください。」
と、言われたが
私だって母の娘なので母は大事なのである。
いくら母に嫌われていても、世話をしたいのは仕方がない。
とは言え……。
冷や飯食いの惨めな毎日。
「魔法使いの来なかった、実母バージョンのシンデレラはつまんないおばさんになってしまいました。」
と、頭の中で自嘲する。
やっと、母の状態が安定し、デイサービスの日が来たので
ずっと我慢していた左肩と左肘の激痛を治してもらいに
鍼灸治療に外に出た。
1人で見上げた大空の、移り変わるドラマチックな美しさに思わず涙が……。
私がチマチマと苦労していた頭上には、いつも、こんな大芸術があったなんて
いつも下ばかり見ていて損をしたお話。
ベルの音
ピンポーン ピンポーン
「はーい。」
ガチャ
「郵便局でーす。」
短い間だけアニメの背景画の会社で働いていた事がある。
朝は10時からで夜は7時まで
の、はずだったが……。
美術監督さんが出勤するのが午後2時である
みんな10時からの出勤ではなく、10時は新入りの私1人。
私は美術監督さんのメモどおりにお掃除をしてからお仕事をする。
いつも掃除機をかけている時に郵便屋さんが来て、たわいも無い話をして帰って行くが、
エプロンをして掃除機をかけている私を
絶対に、お手伝いさんかなんかだと思っていたのだと思う。
私の机の上のメモに
昨日描いた夕方の雲の背景がやり直しになった理由が書いてあった
「もっと可愛く描いてください。」
くぅ〜。わかる〜。可愛く無かった……。
雲でも、ちょうど可愛い形ってのがあるのだ、
ちょうどいいモコモコ具合のね、
具体的にどうとは言えないが……。
「シャンシャンシャンシャン』
ベルの音がバックに流れる洋楽の陽気なクリスマスソングが鳴り響いていた。
クリスマスシーズンの吉祥寺はキラキラしていて楽しかったな。
歩き回れたのは、昼休みだけだったけど。
イタリア料理のお店のイタリア人の従業員さんに
「あなた、毎晩見かける、今晩店の前で待ってるね。」
って言われて、帰り道変えたなぁ
デブ専だったのかなぁ……。
なんて、のんきな事が言えるのも思い出話だからであって、
実は締切が明け方の3時。
「おはようございまーす!」
ってテレビ局の人が取りに来るんだよ
挨拶が芸能界って思ったね。
それとも単に朝だったからかな?
新人だから多目に見て7時に帰してくれてたけど、
朝の3時まで仕事していたら、朝10時に出勤なんかできないよね。
山積みになった自分の分の仕事……終わるのか?と言う不安……いや、終わらせねばならぬ、絶対にだ!
社長さん兼、1番絵が上手で偉い美術監督さんも不安なのか、チェーンスモーカーになっており
さっきまで、私の頭の上にあった
社長さんのタバコの煙雲が鼻から下に下がって来た。
「く、苦しい……。」
私は昼休みにソニプラで買っておいた
小洒落たフレーバーの飴が止まらなくなって
(サーティワンのアイスの味とか変わったやつ)
口の天井がザラザラ……血の味までしてきた……。
美術監督さんはアロマやお香を焚いていたようだ
あの、濃厚なタバコの煙雲の中で香りが効いたのかは謎だった……。
社長さんの好きなノーメロディ系の即興ジャスが大音量で流れている。
普通の職場よりは格段にオシャレな職場ではある。
だが、しかし……。
不安と疲労で頭が爆発しそうで両足のふくらはぎが浮腫んでパンパンだ。
1番苦労したのが、私の絵の描き方が独特で遅かった事だ……。
それは致命傷だった。
結局、私はインフルエンザのA型とB型に同時にかかって死にかけて辞めたのだった。
そのインフルエンザを美術監督さんに移してしまって本当に申し訳無かった……。
最後に仕事した日も、いつも温厚だった社長さんの殺気も感じた。
代えが効かない仕事なのに、大事な美術監督さんを……。
『本当にすみませんでした。
今でも、よく、思い出して罪悪感で胸がチクチク痛みます。』
良いワインも、美味しいケーキも食べさせてもらったのに、
クリスマス会にオシャレなご自宅に招いていただいて、
ジョン・レノンの描いた絵も見せてもらったのに
でも、
「かわいそうに、りくのさん、もう、油絵一生描けないね。」
って、陰で言われたのは絶対に嫌だったんだ。
寂しさ
親友のみぃちゃんと浪人時代を含めて丸4年コンビを組んでいるように一緒にいたが
かなりの大喧嘩を繰り返した。
みぃちゃんは大人しくて真面目そうな外見なのだが、
「なんか、喧嘩したくなって来た!」
と、外見と違う物騒な事を言ってきた
高校時代に、ある日、私がキレた
私は、いつもは温厚なのだが、怒ると物凄く怖いらしく
次の日、みぃちゃんは学校を休んだ
私と喧嘩したから?とは思ったが、
まさか……
自宅に帰ってみると、速達でハガキが来ていた。
学校でフンデルトワッサーと言う画家の展覧会に行った時に一緒に買った見覚えのあるものだった。
激しい感情が沸き上がるような
渦巻きの風景画のハガキだった
「あなたを傷つけてしまい……今日は学校に行けないけれど……。」
ひぃ〜っ!やっぱり私のせいだった。
……いつもは強いのに、私に本気で言い返されたら学校休んじゃうのか、
それ以来、みぃちゃんからは何を言われても許すようにした、
それほどに、みぃちゃんを失いたく無かったのだ。
元々、男子からのいじめが酷すぎて女子校に逃げた私だったが
デブスで女子にも冷笑される容姿だったので
人間関係に絶望していたところに来てくれた大事な親友だったから
ところで
みぃちゃんと言うあだ名はかわいいが、
実際のあだ名は女子プロレスラーの名前をもじったあだ名なのである。
私のあだ名は『ゲルちゃん』だった
仲良しグループのリーダー的役割の人が
昔の有人と同じあだ名を勝手につけたのである。
その人はヤンチャな高校には珍しく、ちょっとインテリの人だった
ゲルはドイツ語で『金』だそうだが、
私に金は似合わないし意味不明である。
金ちゃんのどーんといってみよう……
体重があるからドーンと地響きはしそうだったが
ヤケになって横っ飛びに欽ちゃん走りしてやりたい気持ちである。
今風に言ったら猫ちゃんの『やんのか?ステップ』みたいな動きだ
温厚そうにはしていたけれど、若い頃は血の気が多かったな、自信過剰で傲慢だった。
みぃちゃんも私も、あまりかわいいあだ名じゃなくて寂しいが、
あだ名なんてテキトーだ。
先生のあだ名に『キャベツ』や『犬』
意地悪なおばあちゃん先生は『干し首』
等々、酷いあだ名を付けて、授業中にネチネチいびられた事を陰で復讐していた。
若い頃はビシッと本音を言うのがかっこいいと思っていたが、
歳を重ねたら、本当に酷い事をしたと反省している。
これが大人になると言う事か。
……すっかり昔話おばさんになってしまって寂しい限り……。