君の鋭い眼差しが僕を刺す。
罪悪感の箱舟。僕の後悔の海。
君が口ずさんだ歌の怨みを僕はまだ知りたくない。
高く高く、天に昇っていったあなたは
今、何をしていますか?
美味しいものでもたくさん食べれてたらいいな。
幸せを頬張って笑顔が絶えなかったらいいな。
僕はすぐにはきっとそっちに行けないや。
でも、待っててね。
絶対そっちに迎えに行くから。
君との昨日はどんどん遠くに行ってしまうけど、
僕は絶対に忘れたりしないよ。
君が、大好きだから。
でも、君のいない地球が、
嫌いになりそうなんです。
全部夢だったらよかったのに。
君が死んだ事も、
君の幸せを願おうとしても、
君が先に逝っちゃったことを恨んじゃう僕も。
消えない今が、
戻れない過去だけが、
僕を締めつける。
こんな最初に偉そうな事言っておきながら、
内心、君が帰ってきて欲しいなんて思ってしまう僕は
醜い人間だな。
なんて思う。
もっと優しい人間だったらよかったな。
僕はそんなことを思いながら眠れない夜を過ごす。
子供のようにはしゃぐ君。
今、大人のはずなのに、
子供みたいな無邪気な笑顔。
まあ、当然だよな。
僕が記憶を全部消したんだから。
彼女は、きっと、真の意味で純粋無垢である。
でもきっと、彼女は記憶をどんどん集めていってしまう。
それは汚れるということだ。
だから僕はそれを阻止しなければならないということでもある。
つまり、毎日記憶を消すということだ。
脳にはかなりの負担がかかるだろうが、
彼女が言っていたんだ。
「あたし、最後まで穢れのない人間に
なれてたらよかったのに。」
君が犯されて帰ってきた日の夜。
絶望の夜。暗く狭い世界に思えたあの日。
こう言って泣きじゃくりながら自殺しようとしていた。
「忘れさせるから、君が辛くないようにするから、やめてよ。」
僕も泣きながら君を抱きしめた。
声にならない声。
誰も幸せにならないバットエンドのその後みたいな
後味の悪さだけが僕を襲って。
そのまま小一時間2人で泣きじゃくって。
あまりにも辛そうな表情の君を見て。
僕の研究分野でもあった記憶を消去する装置を
彼女に使ってみた。
とりあえず、言語の記憶だけを残して。
そしたら、ちゃんと成功した。
君は
「あなたはだぁれ?」
と首を傾げて喋る。
あぁ、君の中に、もう僕はいないんだな。
なんて考えてしまう。
でも、これって本当に、君って言えるのかな。
そもそも、君ってなんなんだろう。
大人で、お姉さんみたいな、物知りな君って、
今どこにいるんだろう。
深い事を考えるのは、やめにしよう。
「僕は、君のパパだよ。」
重荷を背負わせてはいけないと思い、
こう答える。
でも脳内の彼女が言う。
「あたし、最後まで穢れのない人間に
なれてたらよかったのに。」
今教えた事で、君は、汚れたのか?
汚れた。汚れた。汚れた?
君が、汚れないには、どうすればいいのか?
ああ、でも、君にとって穢れて居ないってなんなんだ?
教えてくれよ。教えてくれよ。
……僕の思う方法で、やればいいのか?
まず、部屋を用意した。子供部屋だ。
君が退屈しないよう、おもちゃを用意した。
君が遊んだ。
鏡を見ると、君は思い出すかもしれない。
鏡を無くした。
外に出たら、確実に思い出す。
鍵をかけた。
穢れた僕といることは、よくない。
僕は離れた。
監視カメラで様子を見守る。
無言で天井をボーッと見つめていた。
なんで、遊べばいいじゃないか。
君は泣き出した。
ここはどこ?ここはどこ?
って。
どうしよう。僕、僕。
君が泣いてるのを放っておくことなんて、
出来るほど強くないよ。
もう僕にはどうしようも出来ない。
そうだ。
僕と君でやっぱり死んだ方がよかったんだ。
ごめんね、生きさせようとして。
教師が帰った瞬間、
みんなが一斉にバックを持って、
騒がしさが戻った。
放課後は嫌いだ。
だってみんな
遊びの約束をしたり、
駅前の近くにできたお店に行くだとか。
僕だけ何も無いのが辛くて。
誘えないし、誘われないし。
惨めだな、僕って。
僕は机に伏せて寝たふりをする。
みんなが帰るのを待つために。
こんな空間消えてしまえばいいのに、
僕だけが。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、
私には眩しすぎて。
目が眩んでしまう。
クラスで見た君の笑顔が、
私には眩しすぎて。
私は卑屈になってしまう。
世界が、
私にとって光が多すぎて、
もう消えてしまいそうだ。
影は私以外にいないのに。
もうちょっと暗かったら。
私もこんな熱くならずにすんだのかな。
君たちの見せる光のせいで、
妙に昂ってしょうがなくて、
あぁ、もう。
私にもなんて、憧れちゃうよ。
そんな事、結果なんて分かりきってるはずなのに。