子供のようにはしゃぐ君。
今、大人のはずなのに、
子供みたいな無邪気な笑顔。
まあ、当然だよな。
僕が記憶を全部消したんだから。
彼女は、きっと、真の意味で純粋無垢である。
でもきっと、彼女は記憶をどんどん集めていってしまう。
それは汚れるということだ。
だから僕はそれを阻止しなければならないということでもある。
つまり、毎日記憶を消すということだ。
脳にはかなりの負担がかかるだろうが、
彼女が言っていたんだ。
「あたし、最後まで穢れのない人間に
なれてたらよかったのに。」
君が犯されて帰ってきた日の夜。
絶望の夜。暗く狭い世界に思えたあの日。
こう言って泣きじゃくりながら自殺しようとしていた。
「忘れさせるから、君が辛くないようにするから、やめてよ。」
僕も泣きながら君を抱きしめた。
声にならない声。
誰も幸せにならないバットエンドのその後みたいな
後味の悪さだけが僕を襲って。
そのまま小一時間2人で泣きじゃくって。
あまりにも辛そうな表情の君を見て。
僕の研究分野でもあった記憶を消去する装置を
彼女に使ってみた。
とりあえず、言語の記憶だけを残して。
そしたら、ちゃんと成功した。
君は
「あなたはだぁれ?」
と首を傾げて喋る。
あぁ、君の中に、もう僕はいないんだな。
なんて考えてしまう。
でも、これって本当に、君って言えるのかな。
そもそも、君ってなんなんだろう。
大人で、お姉さんみたいな、物知りな君って、
今どこにいるんだろう。
深い事を考えるのは、やめにしよう。
「僕は、君のパパだよ。」
重荷を背負わせてはいけないと思い、
こう答える。
でも脳内の彼女が言う。
「あたし、最後まで穢れのない人間に
なれてたらよかったのに。」
今教えた事で、君は、汚れたのか?
汚れた。汚れた。汚れた?
君が、汚れないには、どうすればいいのか?
ああ、でも、君にとって穢れて居ないってなんなんだ?
教えてくれよ。教えてくれよ。
……僕の思う方法で、やればいいのか?
まず、部屋を用意した。子供部屋だ。
君が退屈しないよう、おもちゃを用意した。
君が遊んだ。
鏡を見ると、君は思い出すかもしれない。
鏡を無くした。
外に出たら、確実に思い出す。
鍵をかけた。
穢れた僕といることは、よくない。
僕は離れた。
監視カメラで様子を見守る。
無言で天井をボーッと見つめていた。
なんで、遊べばいいじゃないか。
君は泣き出した。
ここはどこ?ここはどこ?
って。
どうしよう。僕、僕。
君が泣いてるのを放っておくことなんて、
出来るほど強くないよ。
もう僕にはどうしようも出来ない。
そうだ。
僕と君でやっぱり死んだ方がよかったんだ。
ごめんね、生きさせようとして。
10/13/2024, 3:04:32 PM