YUYA

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2/1/2025, 6:45:46 AM

「不器用な旅路」



誰かのように器用には生きられない
流れるままに歩くこともできない
道化の仮面をかぶれば楽だろうか
でも、それじゃあ自分が泣いてしまう

遠回りでもいい 不完全でもいい
選んだ道が自分を映すなら
それはきっと、間違いじゃない

時には笑われることもあるだろう
「そんなに考えなくてもいいのに」と
でも、心を偽らずに生きることが
どれほど強くて、美しいか

器用じゃなくていい
迷っても、立ち止まってもいい
大事なのは、自分を裏切らないこと

たどり着いた先にある景色は
不器用な旅を続けた者だけが
見ることのできる 唯一の光

1/23/2025, 12:41:32 PM

「瞳を閉じて、君を描く」



アキトはその日も目覚めと同時に、隣の空っぽのベッドを見つめた。そこには、かつての温もりが残っているかのような気がした。けれど、実際にはただの冷たいシーツが広がっているだけだった。

「サエ、君は今、どこにいるんだろう。」

呟いた声は誰にも届かない。隣にいたはずのサエが突然いなくなってから、何もかもが変わってしまった。朝日がカーテン越しに差し込むたび、アキトはその光に追いかけられるように毎日を過ごしていた。

アキトとサエが出会ったのは、春の始まりだった。桜が満開の公園で、彼女がふと振り返った瞬間に目が合った。その後、二人は偶然を装った必然のように近づき、いつの間にか日々を共有するようになった。

星空の下で一緒に願いをかけた夜もあった。
「このままずっと、こうしていられたらいいね。」
サエのその言葉に、アキトはただ頷いた。けれど、その時間はあまりにも短く儚かった。

サエは何も告げずに姿を消した。

最初は怒りや困惑ばかりが胸を埋め尽くした。それでも、時が経つにつれ、アキトはサエが残してくれたものに気づき始めた。彼女がいた日々の中で、彼は自分がどれだけ救われていたか、どれだけ強くなれたかを思い出すようになった。

夜、星空を見上げると、サエの笑顔が浮かぶようだった。
「瞳を閉じて、君を描く。それだけで、また歩ける気がする。」

アキトはそう自分に言い聞かせながら、一歩ずつ未来へ向かって進む決心をした。

季節は巡り、やがて秋が訪れた。サエがいなくなってから、初めて訪れる彼女との思い出の公園。木々は黄金色に染まり、風に葉が舞っていた。その景色の中で、アキトはふと空を見上げ、心の中で呟いた。

「サエ、ありがとう。君がくれたものを胸に、僕はこれからも進むよ。」

瞳を閉じると、彼女の笑顔がはっきりと浮かんだ。そしてその笑顔は、彼をこれからの未来へと優しく導いてくれる光になった。

アキトは静かに目を開け、深呼吸をして歩き出した。足取りはまだ少し重かったが、心の中には確かに、彼女が残した温もりと強さが息づいていた。

1/18/2025, 3:34:58 PM

「てのひらの宇宙」


小さな手のひらに広がる星空
無数の記憶が瞬きながら
消えては生まれ、巡り続ける
過去も未来も、ここにある

涙ひとつが落ちるたび
新たな銀河が生まれていく
砕けた星の欠片さえ
希望の光へと変わる

恐れや後悔、胸の影も
その宇宙の一部として輝く
悲しみが創る道しるべを
誰もがそっと見つめている

てのひらの宇宙に映るのは
私の心、私の世界
無限に広がるこの小さな空を
私は今日も、抱きしめる

1/14/2025, 8:22:48 AM

「果てなき道の奇跡」



遠い昔、この世界には二つの月があった。一つは夜空を静かに見守る「銀の月」、もう一つは朝日を迎えることなく孤独に輝く「影の月」。影の月は、誰にも見られることなく、ただ夜空の片隅で存在していた。そんな影の月を人々は恐れ、時には無視していたが、影の月はそれでも自分の役割を果たしていた。

ある日、孤独な影の月に一人の旅人が声をかけた。その旅人は「ナギ」と名乗る、果てしない旅路を続ける者だった。彼は影の月に語りかけた。
「なぜ、そんなに遠くから私たちを見つめているのだろう?君はきっと、もっと輝けるはずだ。」

影の月は初めて話しかけられたことに戸惑いながらも答えた。
「私はここから世界を照らす役目を与えられた。それが私の使命だから。」

ナギは少し笑って、夜空を見上げた。
「それが君の使命なら、それを誇りに思うべきだ。でも、もし孤独を感じるなら、僕と一緒に世界を旅してみないか?」

影の月は迷った。自分が使命を捨ててしまえば、夜空の調和が乱れるかもしれない。それでも、ナギの誘いに惹かれるものがあった。そうして影の月は少しずつ自分の光を分け与え、ナギの旅路を照らすことにした。

二人の旅は過酷だった。闇に包まれた荒野や、嵐が吹き荒れる大地を越え、ナギは影の月とともに進み続けた。影の月もまた、夜ごとに光を分け与えながら、自分がこれまで知らなかった世界の広さを感じ始めた。

旅の途中、ナギはふと立ち止まり、影の月に言った。
「僕たちはいつか、何か大切なものを失う日が来るかもしれない。それでもこの旅で出会った奇跡を、僕は忘れたくないんだ。」

影の月はその言葉に胸を打たれた。そして自分の存在も、ナギの旅の中で小さな奇跡となり得るのだと気づいた。

長い旅路の果て、ナギは影の月を伴い、ついに目的地にたどり着いた。その地には「生命の鐘」と呼ばれる伝説の鐘があり、それを鳴らすことで新たな光が生まれると言われていた。ナギは鐘を見上げながら、影の月に感謝を伝えた。

「君がいてくれたから、ここまで来ることができた。この鐘の音で、君が孤独だった日々も癒されるといい。」

影の月は静かに頷き、最後の力を振り絞って鐘に光を注いだ。鐘は夜空に響き渡り、新たな輝きが世界を包み込んだ。その瞬間、影の月は銀の月と一つになり、永遠に夜空で輝く存在となった。

ナギは旅を終え、影の月が残した光を胸に新たな人生を歩き始めた。その光は、彼の中でずっと息づき続け、どんな闇の中でも道を照らす明かりとなった。

こうして、孤独な影の月は永遠に孤独から解放され、その奇跡の旅路は人々の語り継ぐ物語となった。

1/12/2025, 1:47:15 AM

「春一番の風に吹かれて」



小さな町に暮らすリオとハルは、子どもの頃からいつも一緒だった。学校へ行く道も、放課後に寄り道する公園も、何もない日々を語り合った真夜中も、全てが二人にとって特別な時間だった。

リオは快活でいつも前を見ているような性格だったが、実は誰にも言えない弱さを抱えていた。そんなリオを支えるのは、冷静で芯の強いハルだった。ハルはリオの夢を誰よりも応援し、彼が迷う時にはいつもそっと背中を押してくれた。

ある年の春、二人にとって大きな転機が訪れた。リオはずっと憧れていた都会の大学に進むことを決め、一方でハルは地元に残り、家業を継ぐ道を選んだ。

「夢を叶えたいんだ。でも……ハルと離れるのは寂しいよ。」
リオがそう言った時、ハルは笑って言った。
「離れるからって絆がなくなるわけじゃない。むしろ、これからが本当の勝負だろ?」

その言葉に救われるような気持ちでリオは旅立つ準備を進めた。しかし、春が近づくにつれ、二人はこれまでの思い出を何度も振り返った。ぶつかり合った喧嘩も、くだらない冗談を言い合った夜も、涙を流しながら励まし合った瞬間も、すべてが愛おしかった。

旅立ちの日がやってきた朝、二人は川沿いの桜並木で再会した。桜の蕾はまだ硬いままだったが、春一番の風が吹き、どこか暖かな香りを運んできた。

「ハル、本当にありがとう。ここまで来れたのは君のおかげだ。」
「リオ、感謝なんていらないさ。君が強くなる姿を見てきただけだ。」

別れを惜しむように立ち止まったリオに、ハルは少しだけ強く言葉を続けた。
「忘れるなよ、夢を追う途中で迷うことがあっても、ここでの時間を思い出せ。俺たちはきっと繋がってる。」

リオは頷きながら、胸に込み上げるものを抑えた。そして二人は、もう一度だけ笑い合った。最後に「さよなら」とは言わず、背中を押すような言葉を交わした。

電車に乗ったリオが窓越しに見たのは、風に揺れるハルの姿だった。その手には一枝の桜のつぼみが握られていた。いつかこの蕾が満開の花になる頃、また会おう――そう胸に誓いながら、リオは新たな旅路へと走り出した。

春一番の風が吹き抜けるたびに、リオはハルとの日々を思い出し、その絆を心に刻み続けた。それは彼がどんなに遠くへ行こうと、迷わないための灯火となっていた。

やがて桜並木は満開を迎えた。その下で、リオとハルが再び笑顔で立つ日が訪れる。二人の絆は、あの春の風に吹かれた桜とともに、これからもずっと咲き誇るのだろう。

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