風の便りに風見鶏は
ひと吹かれの恋に落ちる
「待っていてほしい」と想い人へと
誰かが風に託した言葉
決して自分宛ではない
他の誰かに向けられたもの
だけどそよ風の静けさと
突風の強さを持って自分を
撫でた便りを忘れられず
それからずっと帰りを待つ
さみしさが胸に芽生えてしまって
風上に乗り飛び立って
あの風を追いかけたい
風下の中を羽ばたいて
託した人を一目見たい
託された風へのものなのか
託した人へのものなのか
この気持ちの向きはどちら
それからどんな風を指しても
胸の指針は壊れっぱなしで
「待ってて」
昨日の君がまだ面白くて
思い出し笑いしちゃった
もっと大きくしたかった
シャボン玉吹いちゃった
思ったより飛んでった
今までで一番高かった
吹くよりも吹き出す方が
いいんだよって教えたい
僕がそれを教わったのは
君なんだよって伝えたい
「伝えたい」
あの頃君はこの場所で
UFOを見ようとしてた
双眼鏡で空を覗き込む
君の顔ばかり僕は見てた
大きくなってもこの場所に
集まって二人でUFOを
いつまでも待ち続けるんだと
君と一緒にいられるんだと
小さいながらに思ってた
宇宙人を信じる君を
小馬鹿に思う時もあった
自分だってありもしない
永遠を信じてたくせに
「この場所で」
人生損をしてると言い切る
自信はどこからやってくる
好きなことも向いてることも
誰もがみんな異なるもの
流れに乗った先にある人も
それに逸れた先にある人も
どちらも別に自然なもの
ということを誰もがみんな
わかっていたならおかしいなんて
言われることは起こり得ないのに
「誰もがみんな」
「古傷」という花言葉の
花は蕾のままで今でも
ガーゼに巻かれて束になり
私の胸に添えられてある
いつの日か隅から隅まで
打ち明けられる人に会えたら
受け入れてくれるだろうか
一本ずつ手渡してみたい
棘まで握り締めてくれたなら
少しずつ咲き開かせたい
「花束」