堪えきれぬ涙はすかさず
見上げて都心の空で拭う
眼と気持ちのやり場に良い
星が今夜はいくつか見える
分刻みの電車のように
星が流れ落ちていた
泣き虫が直るように
祈りを捧げていた
遠く離れた故郷の
夜空の思い出馳せる
拭いきれぬ涙はまもなく
下まつ毛の格子を抜ける
かすかに光る星の数だけ
こぼすくらいは 今夜は
「星が溢れる」
数字を言えるようになったから
いろんな遊びで鬼になれたよ
時計を読めるようになったから
約束もできるようになったよ
お金のこともわかってきたから
きっとバスも一人で乗れるよ
春休みにチャレンジしよう
じいの家までバスに乗って
行くって今から電話しよう
出てくる券を取り忘れない
最後にお礼を言い忘れない
覚えた事も教えてあげよう
海の魚を数えながら
空の雲を数えながら
いつか船も飛行機も
乗れるようになりたいな
遠い街に行ってみたいな
「遠くの街へ」
誰よりも早く生を受けるのは
アダムとイブに先越されたので
誰よりも長く生き延びるのと
誰よりも死を惜しまれるのは
どうか自分でありたい
「誰よりも」
イルマーレのようだと驚き
封を開けて取り出してみたら
数字だけの手紙でさらに驚き
ひっくり返して裏面を見たら
二行だけ言葉が書いてある
これは高額当選番号です
宝くじを買ってください
何度も目を擦っても
本当にただそれだけ
私利私欲がそのまんま
時空を超えてきただけ
もうちょっとなんか他に
書くことなかったのかよ
労いとかアドバイスとか
書くことあっただろうよ
十年前ならまだしも
十年経ってこれかよ
たとえ相手が自分であろうが
自分のことしか考えないのが
我ながら自分らしくもあるけど
こんな手紙は書きたくないから
今から未来を変えようと思える
来週辺りから頑張れる気がする
「10年後の私から届いた手紙」
食後に君が差し出した
1ダースのチョコレート
リボンは付かなくなったけど
このやりとりは途絶えずにいて
ほっと胸をなで下ろしたら
だらしないお腹に行き着く
リボンが付いていた頃は
ズボンに乗ってなかったな
運動不足が祟ったかな
はみ出たお腹をなで上げては
その日限りの反省をする
食べすぎるのはよくないし
このくらいにしておこう でも
もう一個だけを繰り返すから
今でも幸せ太りは続く
「バレンタイン」