二人で泥んこになって笑い合ったのはいつだろう。将来は庭付きの一軒家をたてたいねって二人で冗談交じりに夢をみたのはいつだろう。
あなたに綺麗な夜景と共に4本の薔薇と指輪を渡されたのはいつだろう。
いずれ、あなたよりも先に旅立ってしまいたいと思ったのはいつだろう。
晩夏、病院を抜け出し、ヨボヨボになったあなたの手に引っ張られながら最後の逃避行が行われた。
二人で丘の上のどんぐりの木まで息を切らしながら歩く。
やっとの思いで木の下まで着いた。
あなたがこっちを見て、ニッコリと笑っている。
相変わらず、月は綺麗で、満天の星空が空にひろがっている。
木の下で、二人で身を寄せ合いながら座り込む。
まだ、手は握っている。温かい。
あなたと死ぬまで、愛していると誓った。
二人で静かに目を閉じ、呼吸を整え、永久の眠りにつく。
遠い日の記憶が、頭に流れ込む。
私ね、幼少期の頃から、あなたに惚れ込んでいたのよ。来世もきっと、死ぬまであなたを愛すわ
右を見ると、リーダーシップに溢れて活気に満ちた人がいる。左を見ると、おしとやかで誰でも平等に接する優しい人がいる。
その間にいる、自分は…?
何ができるんだろう。この人達の手を、自分が握っててもいいんだろうか。もしかしたら、知らないところで後ろ指を指され、ボロクソに言われているかもしれない。
そんなことが頭に充満して、手を離そうと力を抜く。振り払うことは出来ない。きっと、そんな資格自分にはない。
でも、手は離れない。俯いていた、重たい頭を上げる。両手は、力を強く握られていた。離すまい、と。
右の友達は未来を見据え、戦おうと此方を見ている左の友達は心穏やかに、慰めるように、寄り添うように此方を見ている。
俯いている場合じゃなかった。
力を抜いていた手に再び力を入れる。ニカリと笑い、もう大丈夫だと、言葉なくして二人に伝える。
大丈夫。自分達は、今日も手を取り合って生きていく。