永遠と燃え盛ると思っていた。
時に死ぬほど苦しみ、時に死ぬほど喜ぶような人生で、永遠に。
それが、こんなに弱くなるとは思わなかった。
朝日がよく見える病室のベッドに横たわるあなたの手を握る
「…一生、惚れてくれたな」
笑いながら言うあなた。
『生涯、惚れた相手と結婚したい』
そんなことをあなたにずっと言っていたから、ずーっと気にしていてくれた。
苦し紛れに吐いた息と、新しい不安を吸おうとした刹那、少し冷たいあなたの唇と私の唇が重なる。
おそらく最期のキス。噛み締めることも出来ずに、あなたはベッドに倒れこみ、徐々に体温を失っていく。
あなたが亡くなって、何年がたったのかしら。
私ね、未だにあなたからの愛が捨てられないの。
私、あなたにもらったおし花も、初めて愛をもらったラブレターも、なにもかも捨てられないの。
どれも、あなたの愛で溢れているから。
美しい君には、花よ蝶よと都合のいい言葉を並べる意地汚い芋虫が集まる。
君は純粋の権化みたいな人だから、
芋虫を疑おうともしない。
太陽のように笑って、海と空よりも広い大きな器でそんな奴らも包み込む。
でもね、僕知ってるんだよ
君が本当は地面を這いつくばる芋虫にすらも
嫌われたくないから、あんな態度をしてるって。
世界中の誰からも愛される、なんてことは出来ない事を君は重々理解しているのに。
始めから、あなたに会わなければ良かった。
会わなければ、あなたを失うときの悲しみも、
苦しみも寂しさも感じることが無かったのに。
嫌い。嫌いだ。
僕の事をおいて、僕の手の届かないところに行ってしまうあなたが大っ嫌い
でも、でも、僕はあなたを心から嫌うことが出来ない。
僕はそれ以上にあなたを愛しているから。
きっと、あなたと会うことは最初から決まっていた運命だったんだ。
あなたを見て、初めて心臓があんなにうるさく鼓動することを知ったんだもの。
あの人は太陽のような人だった。
だから、僕のもとを離れて天国に行ってしまった。
あの人が天国に行ってから数十年。
愕然と空いた心の穴は1ミリも埋まっていない。
そろそろ僕も潮時だ。
あの人は太陽になったも同然だから、僕は月なんだろうか。
でも、月だけは嫌だ。
月と太陽はほとんど交わることがないから。
月になるくらいならば、
そう思いながら病院を抜け出し森の泉のほとりに立つ。
光輝く月を見上げる。
月に、月になるくらいならば、
「シリウスになりたい」