意味がないよ。
君が苦しんで苦しんで、苦し紛れにありとあらゆるところを切るのも。
ベッドで嗚咽を漏らしながら泣き腫らすのも。
君が何をしようとも、君は結局死なないし、消えない。
でもね。
君は結局生きるから。
どこを切ってもいいよ。いくらでも泣いてよ。
僕を、殺してもいいよ。
嫌だなぁ…
天体観測をする度にあなたを思い出すのを。
嫌だな、その度にあなたの何もかもを思い出すのも。
あなたの笑顔も、寝顔も、泣き顔も。
あなたの誕生日にプロポーズした時の顔も。
思い出すの、嫌だな。
だってこんなの女々しいじゃないか。
死んだあなたを思い出すなんて。
永遠と燃え盛ると思っていた。
時に死ぬほど苦しみ、時に死ぬほど喜ぶような人生で、永遠に。
それが、こんなに弱くなるとは思わなかった。
朝日がよく見える病室のベッドに横たわるあなたの手を握る
「…一生、惚れてくれたな」
笑いながら言うあなた。
『生涯、惚れた相手と結婚したい』
そんなことをあなたにずっと言っていたから、ずーっと気にしていてくれた。
苦し紛れに吐いた息と、新しい不安を吸おうとした刹那、少し冷たいあなたの唇と私の唇が重なる。
おそらく最期のキス。噛み締めることも出来ずに、あなたはベッドに倒れこみ、徐々に体温を失っていく。
あなたが亡くなって、何年がたったのかしら。
私ね、未だにあなたからの愛が捨てられないの。
私、あなたにもらったおし花も、初めて愛をもらったラブレターも、なにもかも捨てられないの。
どれも、あなたの愛で溢れているから。
美しい君には、花よ蝶よと都合のいい言葉を並べる意地汚い芋虫が集まる。
君は純粋の権化みたいな人だから、
芋虫を疑おうともしない。
太陽のように笑って、海と空よりも広い大きな器でそんな奴らも包み込む。
でもね、僕知ってるんだよ
君が本当は地面を這いつくばる芋虫にすらも
嫌われたくないから、あんな態度をしてるって。
世界中の誰からも愛される、なんてことは出来ない事を君は重々理解しているのに。