美しい君には、花よ蝶よと都合のいい言葉を並べる意地汚い芋虫が集まる。
君は純粋の権化みたいな人だから、
芋虫を疑おうともしない。
太陽のように笑って、海と空よりも広い大きな器でそんな奴らも包み込む。
でもね、僕知ってるんだよ
君が本当は地面を這いつくばる芋虫にすらも
嫌われたくないから、あんな態度をしてるって。
世界中の誰からも愛される、なんてことは出来ない事を君は重々理解しているのに。
始めから、あなたに会わなければ良かった。
会わなければ、あなたを失うときの悲しみも、
苦しみも寂しさも感じることが無かったのに。
嫌い。嫌いだ。
僕の事をおいて、僕の手の届かないところに行ってしまうあなたが大っ嫌い
でも、でも、僕はあなたを心から嫌うことが出来ない。
僕はそれ以上にあなたを愛しているから。
きっと、あなたと会うことは最初から決まっていた運命だったんだ。
あなたを見て、初めて心臓があんなにうるさく鼓動することを知ったんだもの。
あの人は太陽のような人だった。
だから、僕のもとを離れて天国に行ってしまった。
あの人が天国に行ってから数十年。
愕然と空いた心の穴は1ミリも埋まっていない。
そろそろ僕も潮時だ。
あの人は太陽になったも同然だから、僕は月なんだろうか。
でも、月だけは嫌だ。
月と太陽はほとんど交わることがないから。
月になるくらいならば、
そう思いながら病院を抜け出し森の泉のほとりに立つ。
光輝く月を見上げる。
月に、月になるくらいならば、
「シリウスになりたい」
明日、もし晴れたならばあなたにひまわりを届けに行こう。
満開に咲く桜の木の下に永久に眠るあなたに二度と会えない寂しさと、悲しさと心に残る太陽よりも明るいあなたの笑みを。
「もしも、タイムマシンがあったらどーする?」
花を手向けながら眩しいほどの笑顔であなたは言った。タイムマシンがあったら、なんて不思議なことを言うのはあなたぐらいだった。
そうだなぁ…あなたが生きていた頃に戻りたいな。
そんなことを思いながら、あなたのお墓にひまわりを届ける。この世で一番綺麗な人だった。