なあんかひなまつりって
急速に気分が落下していくのです
私にとっておひなさまって
この季節デパートや施設に飾られているのを
遠巻きに眺めるくらいのもので
実際ひな人形を飾る家庭ってどのくらいあるのかしら
とはいえ我が家にも昔は
祖母が姉の為に買ったひな人形があったそうで
今より白い壁の前に飾られたひな壇と
ちょっとおすましな姉との写真が残っている
しかし役目を終えた後はさして大切にもされず
どういう訳か私が物心ついたころには
湿気で爆発したざんばら髪の
おひなさまの首だけが
納戸に転がっていた
当時通っていた保育所では
保育士さんたちの真心こもった顔はめパネルで
子供たちはみんなおひなさまさまとおだいりさま
綺麗なピンクの装飾が似合う
可愛い女の子たちが眩しくて羨ましかった
ざんばら髪で死んだ魚の目をしたおひなさま
一緒に写っているこれは誰くんだ?
はれの日の思い出に少しの申し訳なさが
この季節の空気を今も苦くしている
小さな頃はシンデレラをよく見てた
お姫様より魔法使いになりたかった
希望なんて
ひとつあれば上等
闇を抱えた人ほど明るく笑う
灰の中に蘇る不屈の輝きで
夢か幻でもいい
泥の中に咲くものがあると信じる
真夜中に虹を掛けるような
魔法を信じてる
『たったひとつの希望』
一瞬満たされた気持ちになっても
それは永遠にならないので
幸せを注ぐための器は皆
少しずつ欠けているものなんだろう
『欲望』
生まれ育った街
春になるとたんぽぽの綿毛で覆われて
近所の犬や子供達の遊び場だった広い空き地
今は住宅とクリーニング屋で埋まっている
埋められた側溝には昔
雨が降るとあめんぼが飛んできて
不思議なリズムで水面を滑っていた
過去の中にしか存在しない景色は
地球上の何処より遠いと思った
時間が経つほどに
その距離は離れていく
全てのことに変化は訪れて
それは少し寂しいけれど楽しい
始発列車が走り出し
遠ざかる街へさよならと手を振った
『遠くの街へ』
(上手くいかない時はふて寝をしよう)
現実からの逃走
全力の逃避行
ウユニ塩湖へ行きたい
ナミブ砂漠へ行きたい
ンゴロンゴロ自然保護区へ行きたい
行き方も言葉もわからないけど
現実からの失踪
夢幻の逃避行
お金とか時間とかゴミとかトイレとか知らない
空の色だけ見ていたい
赤い丘ではしゃぎたい
野生の生き物に会いたい
たとえ地球の裏側とて
そこは日常と地続きだって?
それなら星間旅行だ
普通の宇宙じゃないよ
凪いだ鏡の湖面から
化石の樹木の影から
クレーターの縁に奔る夕日の光りから
想像上の宇宙へ繋がっている
そこで青い目をした仔犬と遊んで
サソリの心臓を拾いに行こう
逃避行もしかしたらそこは桃源郷
太陽もしくはブラックホールが終着点
少し怖いのが冒険の醍醐味
勇気をだして飛び込んで
小さな塵になって…
夢から覚めたら
お水を飲んで
ちょと美味しいもの食べよう
(そしたら もうほら 大丈夫)
『現実逃避』