焼き立てのホットケーキにかけるメープルシロップ
明け方の空に光る銀色の月
輝石のような実を結ぶ前のすぐりの花
日だまりで昼寝をしていた猫の背中の毛の匂い
君が寂しくないように
僕が見つけた小さな太陽の
ありかを教えておく
いつか明けない夜が来ても大丈夫
雲で隠れてしまっても
空がそこにあるように
太陽が沈んでしまっても
目には見えなくなるだけだ
一番大切なことは目には見えないって
心の中に一つ太陽を持てば
5億の星が君のための太陽になるってこと
でも君が見えなくなったら
やっぱり僕は泣くだろうな
君より明るく照らすものなんて
どこにも見つけられやしなかったから
『太陽のような』
0と1の間にある不思議
0が1になる不思議
0は歪な円環
0は卵
0が内包する空白にはきっと
不思議がつまっている
気がする
『0からの』
それは
天上から垂らされるか細い糸のような
意地の悪いものであって欲しくないし
さあ、僕の顔をお食べ と
身を削るようなものでもあって欲しくない
春待つ樹洞のヤマネのたち
南の海を目指す魚の群れ
同じ病を抱えて生きる者たちの
分かち合いであるように
『同情』
内側へ丸まった葉脈は
ほろほろ
葉のはがれて
蛹からかえるものたちの
まだ柔らかな翅のかたち
早朝の雪かき
雪の下に枯葉を見つける
きっと
リスや ヤマネや
ダンゴムシも
今は枯葉につつまり
蛹からかえる
羽虫の夢を見ていて
夢を見るものたちの寝息が
少しずつ
大気を暖め
春が来る
枯葉をつまみあげた指先をはなす
ふっと息を吹きかければ
かさかさ
笑い声のような音がした
『枯葉』
過去と今の私に連続性があったとして同一ではない
私が私だと思っている私こそが私だと思うのは傲慢だ
何故なら意識は表層でしかなく知覚できない無意識もまた私なのであるから
0.5秒後の世界しか認識出来ない私を
投石から庇うために右手を上げたのもまた
私なのである
視界の端のブラックサンダーを食べたいがために
なんか小腹が減ったなーと思わせたのもまた
私なのである
しかしその無意識がどこに宿るものなのかはわからないのである
私の右手の小指の爪先まで、
それはやはり私なのである
さて、何が言いたいのかというと、
今日にさよならということはそれ即ち
今日の私と永遠にさよならなのである
人間生きている限り代謝をし続けるものなので仕方ないのである
ぱちん
私を守ってくれたかもしれない右手の小指の爪を切り落とす
生きるとは毎秒さよならなのである
私の中を循環する空気も吸って吐くたびに入れ替わるのだからそれもまたさよならしかし吐いた息にすら私が宿っているのかもしれないので世界を循環するすべてが私なのかもしれないのである
ぱちん
だから私は私を世界から断ち切ることで
私が私であると言い張ることで
私とあなたを切り離すことで
孤独ではなくなったのである
つまり、今日にさよならすることでそれは今日の延長ではなくなり今日と昨日になり私は孤独ではありません、大丈夫
明日の私はきっと、
なんとかであるなんて言葉使いはしないから
『今日にさよなら』