意味がないこと
淡い青の、果てしなく続く空間の中でただ呼吸を繰り返す。私が何なのかも分からぬままに。
時を追いかけていたら、何かが違う壊れた世界にいた。いや、ここではこれが正常なのか。
行く宛もなく彷徨えば、私を見つけた。
ただ無邪気に笑って、友達と歩いている。
そのあどけなさも、幸せそうな笑顔も憎らしい。
あの時壊せなかったなら、今消してしまえばいい。
自分の中で黒い感情だけが疼いている。
次の瞬間、カァカァと声を出して、そんな黒い気持ちを具現化したような色の鳥が飛んでいった。
茜色の空間に変わっていた。
ああ、馬鹿な考え事をしている内に1日が終わってしまう。
私に似た学生はもう下校しているようだ。
思っていたよりもずいぶんと早く大人になるよ。
そうして、時が過ぎて私の世界は、私の人生は壊れて逝くのだから。
そんな世界の中でただ息を吐く。意味がないことを繰り返す。
車視点のCM
あなたとわたし、どんな物語がありますか。
柔らかい雨
人魚の女神が慈悲の涙を流したら、世界に雨が、人々に幸福が降り注ぐらしい。
そして再び幻の湖に水が沸き上がれば救われる。
ずっと、その言い伝えを信じていた。
いつか荒んで貧しい、この世界が明るくなると。
女神様、いつ私達に慈悲をくださいますか。
私はもう、何度も運命と戦いました。
彼らもずっと、希望を待ち望んでいます。
我ら聖騎士団に、剣を握る腕はもうないのです。
一筋の光が射し込む廃神殿の真ん中で祈る。
壊れた女神像は、もう私達に救いなどないことを示唆しているのかもしれない。
「どうすれば…良かったのでしょうね」
どうしようもなくて、女神像を抱きしめ泣いていた。
長い時間が経った。眠ってしまったのか。
見れば、女神像の目が蒼く光っている。
私の涙が女神像の目に掛かり、こぼれ落ち、泣いているように見えていた。
柔らかい雨が降り注ぎ、神殿は湖のように潤んでいた。
一筋の光
ネタ切れだ。
もう何も思い付かない。
頭の中の想像力の海は真っ暗だ。
一筋の光すら射し込んじゃいない。
眠りにつく前に
神代の昔、命を賜った二神は大地と生命を生んだ。
そうして世界を造ったが、女神はある日火傷を負い死んでしまったそうだ。
神話というものは実に単純で、人間どものその時の価値観と、支配の為に創られる。
「君が眠りにつく前に、もしもの話をしようか」
幾星霜を越えたいつの時代か。
死は穢れではなくなり、隠れた魂は生あるものから見えず、そしてそれは救済であるとしたら。
もしも今の生命が死んでも、別の生命に生まれることが信じられているなら。
私達は木を挟んで話していた。
「だから、きっと私達はまた逢えるよ。
今は、安心して眠ってくれ。辛い世から隠れてくれ。」
眠りにつく前の最期の君は笑っていた。
私は涙が止まらないというのに。
「なら、私は人間を眠りに導くわ。貴男がいつか、別の生として彼らを呼び起こせるようになるまで。」
そして、それは神をも支配する。
死が二人を別つとも、何度だって巡り逢おう。