『記憶の海』
いつの頃からだろうか。
父の言動に違和感を覚え始めたのは。
前の日に自分で話したことを覚えていない。
さっき電話したのに、忘れてまたかかってくる。
とっくに亡くなっている母を探す。
一人暮らしだった父を心配し、毎日電話をしたり、それまでよりも頻繁に父の家に行った。
それでも、父本人にも色々なことがわからなくなってきた自覚があり、相当不安だったのだろう。
そのたびに一日に何度も電話をしてきたり、時には声を荒げたりした。
話が通じなくなってくる父が悲しかった。
数えきれないくらいのケンカをし、泣き、一人で食事を取ることもままならなくなり、最終的には施設に入った。
あれから数年、認知はだいぶ進んできてしまっているものの落ち着いている。
私のことも、まだ自分の子どもとちゃんと認識しくれている。
顔を見せると喜んでくれ、帰る時には気を付けて帰れと声をかけてくれる。
まだ、父の子どもでいられている。
でも、いずれそれも記憶の海の彼方へと追いやられてしまうのだろう。
そう、遠くないうちに。
『ただ君だけ』
穏やかな人だった
優しくて
麻雀にハマってて
お酒を飲むとすぐに赤くなって
そしてちょっと天然
大学の卒業式の日
仲の良い友達がみんないるのに
ただ君だけが現れなかった
どうしたんだろう?
何かあったのかな
どうしたの?早くおいでよ
心配して電話した私に君は言ったね
…俺、卒業できなかったんだよ
マジか
麻雀にハマった挙げ句に
単位不足で留年してた
翌年には卒業できてたけど、
麻雀てハマると危ないんだなぁと学んだ
『未来への船』
まるで家族みたいだ。
父や母が作った船に乗り、その中で学ぶ。
帆の張りかたや、行きたい方向へ行くにはどのように舵をとれば良いのか。
悪天候やトラブルへの対処法は。
家族の誰がどんな役割をするのか。
穏やかな日の過ごし方、楽しみ方。
ある程度自分でできるようになったなら、両親の船から降り、今度は一人で、あるいはパートナーと新しい船を漕ぎだす。
そしてまた、その子どもたちが自分達の新しい船を作り、漕ぎだせるように導いていく。
なんて。上手く導くのは難しい。
今日は母の日。
感謝なんてしてもしなくても。
されてもされなくても。
みーんな、未来への船に希望を乗せて送り出せますように。
『静かなる森へ』
静かなる森へ、少年はまるで誘い込まれるようにふらふらと足を踏み入れた。
なんて出だしなら、もう嫌な予感しかしません。
童話でも、赤ずきんちゃんはオオカミと出会っておばあちゃんもろとも食べられてしまうし。
白雪姫は見逃してもらえたから良いものの殺されかけてるし毒リンゴ食べさせられるし。
ヘンゼルとグレーテルはお菓子の家で美味しい思いをしていますが、親に捨てられてますし罠ですし。魔女の家ですし。
最後は悪者はきちんと退治されて主人公は幸せになれますが、グリム童話は悪者が退治される方法もなかなかにエグい…。今は少しマイルドに改変されてるのかな。
物語としては好きですけどね。
静かな森になんて入るものじゃないですね。
『夢を描け』
・夢を具体的に描くことができる。
・好きを貫き通せる強さがある。
・夢を否定しない環境がある。
・正しく応援してもらえる環境がある。
・続ける根気がある。
私が思う、夢を実現できる人の条件。
「続ける」というのが意外と一番難しい気がする…。