『ひとひら』
久しぶり
今日は良いお天気だね
しばらく来られてなくてごめんね
こちらはみんな元気だよ
…って、空から見てくれていたら知ってるかな
昨日、懐かしい写真が出てきたの。
みんなでバーベキューしたときの写真。
盛り上がってすごく楽しかったよね。
あれからもう何年も経つなんて信じられないよ。
…私は大丈夫だから、心配しないでね。
でもこれからも見守っていて。
…また来るよ。
目を開けて空を見上げる。
青い空にひとひらの煙が上っていった。
『風景』
受験に失敗したとき。
ひどい恋が終わったとき。
親が突然亡くなったとき。
風景はなにも変わらなかった。
いつものように空は青いし、いつものように街も動いていた。
足早に通りすぎる人も、楽しそうに数人で話ながら過ぎ行く人も、なにもかもがいつもどおりだった。
自分がどんなにつらいときでも、どんなに悲しいときでも、世の中にはなにも影響が無い。
自分だけが、離れた場所から風景を眺めているような不思議な感覚。
あれからまた時が過ぎ、気付いたらいつのまにか戻っていた日常。風景に溶け込んでいた自分。
そして今、ふとしたときに思う。
足早に通りすぎる人の中にも、あの時の自分と同じ感覚を持って風景を眺めている人がいるかもしれない。
勝手な思い込みということは重々承知だけれど、それでも願わずにはいられない。
今つらい人が、どうか早く、またいつもの風景の中に戻れますように。
『君と僕』
君を守るために僕は生まれた
君が泣いたら僕の出番だ
だから安心して
つらいことは全部僕が引き受けるから
君を傷つけるやつは許さない
……………………
まただ
時々記憶がない時間がある
あいつが帰ってきて
酒を飲み始めたところまでは覚えてるのに
ここはどこだ
いつの間に外に出たんだろう
頭がぼんやりする
服が汚れてる
手も黒い…いや、赤い?
まさか…
……………………
君は混乱してるね
でも大丈夫
僕が守ってあげるよ
僕のほうがうまくやれる
ずっとそう思ってたんだ
だから君はもう
ずっと隠れていていいよ
僕が君になってあげるから
『夢へ!』
夢に向かって頑張ってる人は素敵。
夢を叶えた人も尊敬する。
でも、正直なところ、
「諦めなければ夢は叶う!」とか
「夢は大きく!」とか
「夢に向かってる人は輝いてる!」みたいな風潮、
大した夢の無い私には、ちょっと負い目みたいなものも感じてしまうし、息苦しい。
私は小さい夢を叶えるだけで満足してしまうから。
ホールケーキを一人で食べた、とか。
行ってみたかった国に行けた、とか。
ああ、そうそう。
ここで文章を書いてることも、やってみたかったことのひとつだった。
満足。
『元気かな』
最近全然会ってないけど、あの子元気かな。
と、ふと思った。
その子から連絡がきた。
びっくりした。
けど、以心伝心みたいでちょっと嬉しい。