『夢へ!』
夢に向かって頑張ってる人は素敵。
夢を叶えた人も尊敬する。
でも、正直なところ、
「諦めなければ夢は叶う!」とか
「夢は大きく!」とか
「夢に向かってる人は輝いてる!」みたいな風潮、
大した夢の無い私には、ちょっと負い目みたいなものも感じてしまうし、息苦しい。
私は小さい夢を叶えるだけで満足してしまうから。
ホールケーキを一人で食べた、とか。
行ってみたかった国に行けた、とか。
ああ、そうそう。
ここで文章を書いてることも、やってみたかったことのひとつだった。
満足。
『元気かな』
最近全然会ってないけど、あの子元気かな。
と、ふと思った。
その子から連絡がきた。
びっくりした。
けど、以心伝心みたいでちょっと嬉しい。
『遠い約束』
忘れんぼうでおっちょこちょいな私のために、娘が5歳くらいのときによく言ってくれてた。
「お母さんが何にも忘れない薬を作る!約束する!」
あの約束、お母さんはまだ覚えてるよ。
早めに叶えてもらえると助かるんだけど…
忘れたんだろうなぁ…。
『フラワー』
幼い頃に作ったシロツメクサの花冠
通学路で飛ばしたタンポポの綿毛
見上げるほど大きなヒマワリ
門出にもらった色とりどりの花束
落ち込んだときに自分で買ったガーベラ
結婚式で持った白いカサブランカ
子どもがくれた赤いカーネーション
ぼんやりと眺めた祭壇の白い菊
花は人生を彩り
喜びも悲しみも
これからも心に刻んでいくのだろう
『新しい地図』
ずいぶん長いこと旅をしてきたものだ。
疲れはてていた旅人は、宿に着くとすぐにベッドに体を投げ出した。体が鉛のように重く、マットレスにどこまでも沈み込んでいってしまいそうな感覚。
そのまま、気がつくと泥のように眠っていた。
目が覚めると、少しだけ気分が良くなっていた。しかし、起き上がる気にはまだなれず、そのまま上着のポケットから古びた地図を取り出した。
両親から渡されたその地図は、もう擦りきれてところどころ穴が開き、読めないところもあるくらいぼろぼろになってしまっていた。
大切な地図なのに、旅の間に雨に濡れてしまったことや、感情に任せて雑に扱ったことも一度や二度ではない。
もう旅をやめてしまおうか。
どこに向かっていたのかも、もうわからなくなってしまっていた。
すっかり気力を無くした旅人は、それから何日も何日も宿から出ず、何をするでもなく、部屋の中からただただぼんやりと窓の外を眺めて過ごした。
そんなある時、窓から美しい青い蝶が入ってきた。旅人が気まぐれに捕まえようとしたが、蝶はひらりと旅人の手をかわし、外に出ていってしまった。
旅人は、蝶をつかみ損ねた手を見つめ、ふと我に返った。
俺はここで何をしているのだろう。
ここは居心地良いが、変化がない。
つまらない。
外に出たい。
陽の光を浴び、風の匂いを感じたい。
旅人は、ついに動き始める決心をした。
不安がないわけではない。しかし、旅人は、それまでの旅で様々なことを学んでいた。
そう、自分でも気がつかないうちに。
どの木の実なら食べられるのかを知っている。
魚の取り方を知っている。
火をおこし、獲物を焼くこともできる。
危ない道を予測することもできるし、ケガをしたときの対処の仕方もわかる。
それまでの旅の経験が、これからの新しい旅の助けになるにちがいない。
大丈夫。なんとかなる。
よし。
どこに行こうか。
まずは新しい地図を手に入れよう。
旅人は宿から出てまぶしそうに目を細めると、一歩、足を踏み出した。