【言い出せなかった「」】
ギラつく君の目の奥は、これから私をどう後悔させようか考えている。いつもより低い声は、攻撃的なときの合図。
それは、私が君を、多少なりとも不快にさせたから。
私は笑顔を作れなかったけど、溢れたのは涙だったけれど、
怖くはなくて、むしろ愛おしいと思えた。
だって私は、どんな君でも愛すのだと決めたから。
でも、喉は開かず、唇は重い。腹の底に沈んでく愛の言葉。
口をついてでたのは。
「別れてください」
【secret love】
それはたとえば、
手が痛い、何かに刺されたかも、なんて、血の出てない手を見せてくる。
種のわかりきったマジックを見せてくる。
猫のように、私の上に乗ってくる。
私と二人きりで遊ぶための時間に、ゲストがいるだけで、貴方の心は曇り模様。
それは多分、貴方が気がついていないだけの、貴方の中に秘められた、恋心のせい。
私の一番になりたいと思う、幼い心のせい。
誰かからの評価なんて、貴方の成長には何も与えないのに。
【ページをめくる】
朝起きて、1日のページをめくる。
学校に行って、教科書をめくる。
休み時間には、小説をめくる。
塾に行って、テキストをめくる。
めくるめく日々の中で、私は今日も。
布団をめくって、おやすみなさい。
【もう一歩だけ、】
休日。悲しいことがないのに涙がボロボロと溢れた。
最近は、勉強続きの毎日だったからだろうか。気が抜けて枯れ果ててしまったのだろうか。私の心はこんなにも静寂を保っているのに、滝のように溢れてくる。
それはちょうど、エアコンは、つけ続けるよりも、電源を切る時とつける時の方が電気を使うらしい、みたいなこと。
歩き続けることのほうが、休むことより楽なのだ。
周りには「休め」と言われた。
じゃあ、なにをしたらいいんだろう。
【Midnight Blue】
夜更かしをしてしまったとき、2階の窓には、夜風を立てる車が、ぽつぽつと走っているのが見える。
たまに、ぶんぶんと奇声を上げるバイクがいる。
こんな夜に起きている人がいることに、毎夜、私だけじゃないんだ、という気持ちになる。
過ぎ去っていく車 それぞれに、あの人は夜遅くまでお仕事だったのかな、とか、あの人はお出かけしていたのかな、とか、想像を膨らませる。
家の窓から見える景色は、いつもなにげなく歩いている道だ。
でも、2階から見るだけで、黒いベールをまとうだけで、こんなにも特別になる。
私たちの生活には、意外とそんな特別が、たくさんあるのかもしれない。