t「旅の途中」
人生は死ぬまで旅の途中だ
みたいな事を誰か言ってなかったか?
なんで生きる事が旅の途中やねん
途中参加も途中下車も出来んのやぞ
言葉を残した人は旅にでたらいい
俺は行かない、行く必要がない
俺は楽になるまで自由に生きるんだ!
t「まだ知らない君」
画面の向こうの君は何をしているのかな?
同じ画面を見ているのに、感じる事や思う事が違う
見た目も年齢も思考もやりたい事や生き甲斐とか
みんな違う毎日を過ごしている中でたまたま
本当にたまたま同じ画面を見た君
きっと君は私と違う時間に見ていると思う
こんな茶番でふふって笑ってくれるかな?
それとも少しバカにされちゃうかな?
なんでもいい、君の感情が少しでも揺れてくれたら
画面の向こうで見ている君が今日も幸せであれと
明日も明後日もこれからも辛い事があったとしても
それを乗り越えて笑って頑張って生きていてほしい
そう私は願っているよ、まだ知らない君へ
私と誰かと画面越しで笑ってまたあおう
t「日陰」
日陰からそっと君を見る
いわゆる告白シーンというものに遭遇してしまった
人気者の君だからこおゆう事はよくある事なのだろう
困ったように笑いながら首を横に振る君
あの感じだとまた断ったんだと思う
相手の人はお辞儀をしてどこかに行ってしまった
そうしていると日陰から身を乗り出しすぎたのか
少し気まずそうな表情の君と目が合った
そして君が近付いてきて、今の見てた?と
ごめん、見てた。素直に謝っておこう
いや、いいんだよ。悪い事しちゃったかなぁ
そう思うなら誰かと付き合えばいいんじゃないか?
いやぁ〜今の子、自分じゃなくて君宛だったんだよね
…は?
あのね、君の事が気になるから紹介して欲しい的な
は!?
断っわちゃったごめんね☆
はぁぁぁぁぁぁぁあぁ!?
t「帽子かぶって」
「これ持ってて」
君に無理やり被せられた帽子。それは自分をキュンとさせる要因としては十分だった。
肌にじとりとまとわりつく生ぬるい風が人々の間を駆け抜ける。太陽が笑顔で輝いて汗が止まることを知らない。
きっと君はそんな自分を見たんだろう。帽子をかぶっていない自分を見て、君の帽子を被せてくれた。そして君は水を片手に戻ってくる。
優しい君の心遣いに、嬉しくなる頬を帽子の下に隠した。
t「小さな勇気」
あぁ知ってる。私も同じだったから。
人通りが多い駅の前の四人掛けのベンチに座る子どもにたまたま目がいった。
いつもなら気にもとめないけど、その子どもの動きがあまりにも挙動不審で気になったのかもしれない。きょろきょろと周りを見渡して、それからペットボトルを見て、またきょろきょろと周りを見ている。私も幼い頃その状況になった事がある。でも今のご時世、私の想定した内容と違っていたら私が不審者になりかねない。でもあの様子は間違いなく幼い頃の私と同じ。人見知りが激しい私はその子どもに声を掛けるという行為はとても勇気がいる。その子のそばにいけばもしかしたらと思ってもその足がまず動かない。その子の顔が曇ってくる。心が震えながらその子に近づく、きっとその子も人見知り私と同じ。
「蓋、開かないの?」
「うん」
「かして」
「(頷く)」
「開いたよ」
「ありがとう…!」
「どういたしまして」
心臓がバックバク鳴った。その場から足早に立ち去る。歩きながら振り返るとその子はやっとありつけた飲み物をゴクゴクと飲んでいた。良かった…。お互いに知らない人との会話は勇気がいる。人見知りの私と小さな子ども、お互いの小さな勇気がたまたま噛み合って、あの子が笑えて本当に良かった。救われた過去の自分と重ねて自分も少し口角があがった。