「ごめんね」
今日でこの思いと強制的におさらばだ。
伝える気なんてなかったのに、泣きながら言葉を口にしていた。
明日から僕らはもう会うことはない。だから今日、きみを見送って僕の初恋は消化不良で僕の中でゆっくり溶かして消えて癒えるのを待つつもりだった。
なのに、きみが僕に笑いかけるから、きみが僕ともっとお話したかったなんて言うから。僕だってもっときみのそばにいたかった。
「きみが好きなんだ。迷惑なのもわかってる、でも、ごめんね。下心ありでそばにいてごめん。僕なんかが好きになって、ごめん」
きみの顔なんて見てられない。伝えてしまったしかも泣きながら謝りながら。そして僕は振られる。でもきっとこれはこれで良かったのかもしれない。振られてしまえば僕の中で消化不良にならずにすむ。
「ごめん……」
僕の恋はこの瞬間に終わった。
「めちゃくちゃ嬉しい」
と思った。
「お前がその色々抱えて覚悟を決めて告白してくれたのに、その嬉しくてニヤけて…いや、その、馬鹿にしてるとかじゃなくて…あぁ!もう!泣くなよ、俺もお前の事が好きなんだよ!!!」
「ちがっこれはっ嬉しくっ」
「はぁ〜それにしても俺たち両思いだったんだな…」
「そう、だったんだね」
「ずっとお前のこと見てたのにな、気づかなくてごめんな」
きみの色んな言葉が僕の中で消化不良になりそうなほど降ってきて僕は今胸焼けで笑っている。
半袖
袖の長い衣服が、袖の短い衣服に変わると夏が来たなと実感する。
暑い、死ぬほど暑い、今日も暑いし、昨日も暑かった。きっと明日も暑いだろう。
暑い季節は好きではないが嫌いでもない。
ただ強いて言うなら寒い季節の方が個人的に好きだ。
なんでかって言うと、寒さを理由に好きな人にくっつけるから。暑いと近づくことでさえお互いに暑くて無理。
ただ夏にも良い事がある。半袖になると好きな人の肌が見える。
活発な人だから、春の始まりから夏の終わりに日焼けした笑顔がとても眩しくて、その過程をそばで見れるのが嬉しくて、好きな人を肌から感じる。
近づけはしないけど、そばにはいれる。
互いに暑い暑いと言い合いながら短い季節を謳歌する。
たまに触れるしっかりした腕に胸を打たれてるなんて知らないだろう。
肌と肌が触れる、これは恋人じゃない夏の半袖の時期にしかできない事。
天国と地獄
「好きだ」
その言葉に僕は地獄に落とされた。
貴方が好き。僕は貴方にずっと恋してる。
でも君と貴方では釣り合わないし、僕を好きになる事はない。僕はいつまでも貴方の親友でありライバルでもある、と思う。
見目も性格も良い貴方はいつも誰かに囲まれている。そんな中でも貴方は、僕と日常は過ごしている。貴方を囲う人たちの中には僕よりも相応しい人がたくさんいるはずなのに、貴方は決まって僕のもとへ来てくれる。それが嬉しくて、いつか離れる未来より今貴方の隣に居る幸せを噛み締める事にした。
なんの事のないある日会話、貴方から「好きだ」と告げられた。
貴方の好きは歯切れがよく爽やかで下心のない、友達としての好き。その言葉を聞いた時に好きな人に言われた事の嬉しさと、僕と貴方への好きの重さの違いに悲しくなった。天国と地獄を一気に味わった気分だ。
ははは僕も好きだよ。と歯切れの悪い後味を引く言葉。その言葉が体にドロっと溶けて僕の感情を蝕む。
わかっていた事なのに悲しむのは勝手すぎる。
そう思っていたのに、視線が下にと落ちる。今貴方の顔を見ていたくない。
僕の恋心はずっと僕の中でくすぐるとそう決めている。
透明な水
僕らは個性のない透明な水だった。
成長して自我が出て白色の水になった。
そこから何色に染まるのかは自分次第。
みんなに希望を与える水になったり
みんなに笑顔を届ける水になったり
みんなを堕とすまずい水になったり
個性と自我で透明な水だった僕らは
それぞれの色を持ち始める。
僕の隣にいる君は誰よりもまずそうな色で誰よりも優しい。
君の隣で歩いた僕は誰よりも君が辛かったかを知っている。
足掻いて足掻いて何度も諦めなかった君の心は、ぐちゃぐちゃで色んな軌跡が渦巻いてる。君の歩いてきた跡は何色にもかえがたい事だから誰もが避ける個性の色になった。
それを僕は知っている。
まだ透明な水のままの僕だけど、将来は君みたいな色に染まりたい。
忘れられない、いつまでも。
今でも鮮明に思い出せる、あの時の悲しみも心の震えも最後に見たあなたの顔も。
命の火が燃え尽きる時、それは本当に突然訪れる。
確かに前の日元気はなかった、言葉も話せないあなたはいつも通り眠った。
次の日の朝、私はいつも通り、いつもと変わらない朝を迎えていた。あなたが静かに息を引き取るまでは。
長くないと言われて蓋を開けたら言われたよりも長く長く一緒に過ごした。お互いに大好きで、いれる時はいつも傍に居た。あなたの顔が好き。あなたの愛らしさが好き。あなたの存在にいつも癒されていた。
あの日、あの時、あなたは私が視界に入るとゆっくりかたくった。泣いて泣いて泣いて、泣いた。今では泣いた顔でお別れをした事を少し悔やんでる。最後に笑顔でお別れすれば良かったと、たくさん泣いた後に思った。
まだあなたと生きたかった。まだあなたと笑い合いたかった。
亡くなったあなたをずっと引きずるわけにはいかない、けどあなたと過ごした日々は、いつまでも私の中で暖かな幸せとして残り続けている。
お別れした悲しみと今まで貰った幸せは忘れられない、いつまでも。
ありがとう、またね。