二人ぼっち
君と私のお墓を建てた。
早くに両親をなくした私たちには死んだ時に入る場所など知る由もない。
だから私たちは誓いあった。
生きてる間も死んでからも同じ場所であなたと一緒に。
泣く時も笑う時もあなたと分かち合いたい。
そんなお互いの思いから私たちはお墓を建てた。
お墓の横には名前が彫られるが、私たちの名前だけが刻まれている。
君と私の、二人ぼっちのお墓。
夢が醒める前に
過去に栄光を手にした。簡単に取れるものじゃない。
努力して何度も失敗して、何度も挫折しそうになってそれでも好きで、認められたくて、それがやっと報われて、やっと世間に広まった。
そして、僕は怪我をして過去の栄光と時間と共に人々の記憶から消え去った。
僕は今、新たな道で有名になっている。それは僕が小さい頃に望んだ夢じゃない。それでも僕は僕のやってきた事を世間から消さないために違う形で名を残す。
今日もまた、過去の僕に憧れて人が来る。今の僕と向き合いながら過去の僕を見つめる君たちと勝負をする。
君たちが観た、過去の僕の夢が醒める前に、この勝負を終わらせよう。
泣かないよ
泣かないよもう弱くないから
泣かないよもう怖くないから
泣かないよもう一人で立てる
追いつくよライバルの君に
追いかけるライバルの背中
追い抜くよライバルの君を
泣かないよ寂しくても
泣かないよ心が痛くても
泣かないよ例え独りなっても
僕には仲間がいるから
僕には必要としてくれる人がいるから
僕には君が居てくれたから
でももし僕が泣きたくなったら
君のそばで泣かせて欲しい
弱虫の僕を知ってる君の隣で
星が溢れる
君が亡くなって空の星の一部になった。
人は亡くなったらお星様になるんだよ、幼い頃に母からそう聞いた事を思い出して何となく夜空を見上げた。
キラキラと輝く星々。僕も遠くない未来で死んだ時に星の一部になるんだろう。その時は君の隣のお星様がいいなぁ。君とまた、肩を並べて輝ける、僕らはいつも誰かの光だった。
君がいたから僕は居た。僕がいたから君は居る。
僕らが歩んだ軌跡は誰かの道標。いつも誰かの輝きに寄り添えるように。僕らはずっとその時まで生き続ける。僕らが憧れた一等星のように。
もし夜空がたくさんの星々を抱えきれなくて、夜空から溢(あふ)れそうになったら、きっと僕は君と一緒にすすんで溢(こぼ)れる。君となら星から溢れたって構わない、君の隣が僕の居場所だから。
僕は頑張った。今そっちに行くからね。
窓越しに輝く星々に優しい笑みをこぼした。
安らかな瞳
君と過ごしてきた日々は僕にとってかけがえのないものばかりだった。僕が泣くと君は気まずそうにしながらも隣に立っていてくれて。ボクが笑ってると一緒に笑ったり、すこし怒ったりした。
君の隣にいられて僕はとても幸せだった。
だから、今、君の瞳が閉じるその瞬間まで一緒に居られて良かった。僕たちは職業柄最期の瞬間にあえる事無く、のちに訃報として僕たちの、大切な人の最後を告げられる事がある。僕たちはお互い何度も深い傷を着けてきた事がある。それでも僕たちは生きた。幼い頃から目指した僕たちの一等星が生きさせてくれた。僕らの夢はいつまでも夢だから。
ピー、甲高い機械音が部屋になり響く。ずっと無気力な君の手を、僕はずっと握っている。不意に君の手がぎゅっと僕の手を握った。僕はハッとなって顔を上げて君の顔を見た。今まで視点が定まっていたのかわからない瞳が今はハッキリと僕を捉えている。
っ!いきなりの事で言葉が出なくて代わりに涙がボロボロと落ちていく。そんな僕を見てかわらかないけど、君はあの頃と変わらない表情でふっと笑った。そしてそのままゆっくり眼を閉じた。もう次にその瞳を見る事はない。
君が僕を見る最後の瞳は安らかでとても優しい瞳だった。