コハク

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安らかな瞳
君と過ごしてきた日々は僕にとってかけがえのないものばかりだった。僕が泣くと君は気まずそうにしながらも隣に立っていてくれて。ボクが笑ってると一緒に笑ったり、すこし怒ったりした。
君の隣にいられて僕はとても幸せだった。
だから、今、君の瞳が閉じるその瞬間まで一緒に居られて良かった。僕たちは職業柄最期の瞬間にあえる事無く、のちに訃報として僕たちの、大切な人の最後を告げられる事がある。僕たちはお互い何度も深い傷を着けてきた事がある。それでも僕たちは生きた。幼い頃から目指した僕たちの一等星が生きさせてくれた。僕らの夢はいつまでも夢だから。
ピー、甲高い機械音が部屋になり響く。ずっと無気力な君の手を、僕はずっと握っている。不意に君の手がぎゅっと僕の手を握った。僕はハッとなって顔を上げて君の顔を見た。今まで視点が定まっていたのかわからない瞳が今はハッキリと僕を捉えている。
っ!いきなりの事で言葉が出なくて代わりに涙がボロボロと落ちていく。そんな僕を見てかわらかないけど、君はあの頃と変わらない表情でふっと笑った。そしてそのままゆっくり眼を閉じた。もう次にその瞳を見る事はない。
君が僕を見る最後の瞳は安らかでとても優しい瞳だった。

3/14/2023, 10:32:14 PM