改めて言うと、何だかむず痒い。
そうと言えばそう、なんだけど、らしくないって言うか。
ありきたりだけど、面白味もないけれど。
それでも、伝えていいのなら、聞いてほしい。
でも、やっぱり伝えたくて。
”あなたがいたから”ここにいられるんだって、ずっと思っていたから。
あなたがいたから
どしゃ降りの雨を見上げて、ついてない、なんてため息。
すっかり空になった懐も、跳ね返りが冷たいズボンの裾も。
まるで泣いてるみたいだなぁ、なんて、どこか他人事で。
傘、どこに置いてきたっけ?
出掛ける前に渡された、安っぽいビニル傘は、乗り継いだ電車の中に忘れたかもしれない。
とにかく、どう帰ったらいいんだろう。
こんな時に限って使いきってしまったカードを眺める。
なけなしのお金で買った煙草に火を着けて、早く止まないかなぁ、なんて。
そんなことを思っていたら、すっと差し出された何かに顔を上げる。
「……やっぱりこうなってると思った。ほら、帰りますよ」
呆れ顔の君にちょっとだけ驚いてたら、ぐいっと腕を引かれて。
歩き出した君の手には、もう1本の傘。
でも、わざと言わないのが君らしくて黙ってた。
”相合傘”で帰ったその日は、最低で最高の日になった。
相合傘
ただ、落としたかったのかもしれない。
全てを、奪いたかったのかもしれない。
その事にどんな意味があるかなんて、当事者にしか解らない。
ただ、言えることは。
俺達は間違っていたんだろう。
何が正しかったのかは、もう無意味でしかない。
俺達が正しいと、正解だと思ったわけじゃなくて。
ただひたすらに、落とすことだけを考えてきた。
その結果がこれなら、受け入れるだけだ。
その覚悟はあったーーーけど。
その為に、悲しませてしまったことも事実。
それが、後悔になるんだろう。
”落下”していく自分を見下ろしながら、俺達はただ、あるがままを享受するしかなかった。
落下
例えば、明日。
例えば、一時間後。
例えば、一年後。
どうなっているかなんて解らなくて。
どうしていたかったのかも、きっと忘れてて。
笑って、泣いて、怒って、妬んで。
そうやって消えてった時間が戻ることはないけれど。
未だ来ていない”未来”に思いを馳せるのは。
その世界が幸せだと信じて願っているから、かもしれない。
未来
あの頃は、何をしてたっけ?
昔でもないけれど、振り返るほどのものじゃない。
何も変わっていないし、何か変わったのかもしれない。
何とも言いがたいけれど、そんなものでしかないのかも。
”1年前”は、一体どんな過去で、どんな未来を思っていたんだろう?
1年前