それは、遠い記憶。
返事を聞けなかった小学生。
からかわれることを気にしてた大学生。
仕方ないな、なんてフォローしていた社会人。
身近すぎてどうしても素直にできなかった幼馴染み。
どれも大切で、少しもどかしい思い出だけれど。
からからと楽しげな笑い声と、頭を撫でてくれた大きな手。
絶望を絶望と知らずに必死で縋り付いていた私を見つけてくれた、あの人。
やっぱり、その人に渡したかったなぁ。
ーーーなんて思いながら、ビターチョコを頬張った。
バレンタイン
ずっと、言えなかった。
それでも、そうしようと決めたから。
本当は、伝えるつもりはなかったんだ。
どうしても、どうあっても、無意味だとしか思えなくて。
それでも、期待したのは、お前だったから。
正直、複雑ではあるかな。
理解しなくていい。知っていてくれるだけでいいと言い訳して。
余計なことを伝えてしまうんじゃないかと思わなくもないから。
だとしても、そんなことがあったな、くらいで記憶の片隅にでも留めてもらえるなら、十分に幸せだ。
ーーーだから。
だからどうか、俺がたどり着くまで待ってて欲しい。
待ってて
……本当はね。ただ、笑っていたかったんだ。
笑って、バカやって、怒られて、仲直りして。
なんてことない1日を過ごして、明日が楽しみだね、なんて思えるような”セカイ”があったから。
でももう、今のボクにとっては無意味で無価値だから。
だってそう思える日常は、二度と戻らないって解ってる。
ーーーだからね。せめて君には、楽しく笑って欲しいんだ。
本音を言えば、君のこと、羨ましいし、妬ましいし、悔しくて堪らない。
マジでボクと同じになれば良いのにって未だに思ってる。
だけど同じくらい君の行く先が幸せならいいって思えるくらいには君のこと、気に入ってるんだよね~。
ボクが君に嘘ついたことなんてないことくらい、解ってるよね?
まぁ、君を巻き込んだことに変わりはないし、奪ってしまう事実は消えないし、傍迷惑でしかないだろうけどねぇ?
正直、贖罪にもならない程薄くて、あるかも解らない縁に縋る滑稽さはあるけど。
それでも、君には伝えたいなって思ったんだ。
”あの日”、ボクを見つけてくれて”ありがとう”って。
伝えたい
君には、たどり着きたかった何かがあるのかな?
ボクにはあるんだよね。
でも、どうやったってたどり着くことはできないんだけどさ。
それでも、もういいかなって思えたのは君がいたから、なんだろうねぇ?
君がいて、君の仲間がいて、ーーが、君と一緒にいるのなら、それだけでよかったんだ。
例えばその場にボクがいなくても、十分すぎるくらい”シアワセ”な景色な訳で。
その為だったら理想なんかどうでもよかったし、ボク自身が邪魔になるなら、いなくなることくらいできたよ?
ーーーでも、ーーにとってはそうじゃなかったんだねぇ。
だから、これからこの場所で起こることは君にとって1つの終わりで、始まりなんだと思ってくれたらいい。
なーんて、ボクが言えた義理じゃないんだけど、ね。
この場所で
譲れないものって、君にもあるでしょ?
ボクにもそれはあって、どーしても譲れないものがあったんだ。
きっと君からしたら、そんなことで、とか、だからって、とか、そんな感想になることなんだろうねぇ。
ーーーでも、ボクからすれば、そうじゃなかっただけ。
君にとっては許せることでも、ボクにとってはどーしても許せないことで。
君だったら譲れることでも、ボクじゃどーしたって譲れなくて。
ただそれだけの違いで、こうなったんだ。
単なる言い訳だろうって? ははっ。そーかもしれないねぇ?
例えそうだとしても、迂闊に言わない方がいいよ?
だってーーー誰もがみんな、そんな”狭間”で”笑ってる”だけ、なんだからさぁ?
誰もがみんな