ずっと隣で
授業中だというのに、隣の席の彼はひたすらに絵を描いている。
彼は、私がノートを貸してくれる事に味を占めているのだ。でも悪い気はしない。なぜなら引き換えに彼の描いた漫画を読ませて貰っているからだ。
漫画の内容は、授業への集中力をかなぐり捨てているだけあってとても面白い。読んでいると1人で笑いそうになったり、悲しい顔をしたり…。おかげで私は人間観察好きな友達から面白がられる始末だ。
彼は将来漫画家になりたいらしい。
彼は図々しいことに、漫画家になったら私にアシスタントをして欲しいと語った時があった。「美術得意じゃん。」と。
なんと言う事でしょう。私を今以上に自分の将来に巻き込むつもりでいるのだ。とても図々しい。
そんな事を考えながら、空や草花、人や車など、周りを眺めながら帰り道を歩いた。目と頭の中は無意識に、物体を見ては構図を考えていた。
欲望
どうやら私は”アイツら”に哀れに思われているらしい。
闇の中へ押し込められたかと思えば、引っ張り出され、天秤にかけられ、また闇の底へ放り込まれる。
その繰り返し、それが私の扱われ方だ。
確かに側から見れば可哀想かもしれない。
でもね、たまに闇から開放されたときの、思う存分暴れていいよって言われた時のあの疾走感が堪らないんだ!
私からすればアイツら、”喜怒哀楽たち”が不憫でしょうがないね。
列車に乗って
辿り着く先に想いを馳せて乗っている人々。
年齢は違えど、気持ちは同じ。
皆、ドアが開くのを今か今かと待ち構え立ち上がる。
足並みを揃えそれぞれの出口へと吸い込まれてゆく。
心を躍らせ、重い荷物を軽やかに颯爽と引きずり歩く。どんなに足が疲れ果てようと、お酒で酔い潰れようと、そんなの知ったこっちゃない。
なにせ旅行客は無敵なのだ!
どこか遠くへ
お母さんは私たちの背中を、
めいいっぱいの風とともに押してくれた。
風は暖かく、とても心地が良い。
初めて見る景色は色鮮やかで、寂しさを紛らわしてくれた。
ふわりふわりと地上に降りると、やわらかい土と葉が私を受け止めてくれた。
私はタンポポ。
太陽が世界を空から明るく照らすように、私は世界を地面から明るく照らす存在。
あなたはどうやって世界を照らすの?私に教えて。