あぁ、雨か。
心の中で呟いたか、口に出したかは分からないけど、心底残念な気持ちだった。
雨がリズムなんてもんを気にせず、ただ怒りを募らして、地面を叩きつける。
ただ、わたしは、机に油性マジックで書かれた罵詈雑言を、消毒用のアルコールで雑巾を濡らして、掠め取ろうとする。
わたしは昨日死んだはずなのに……
出入り禁止の屋上に深夜に入って……
飛び降りて、やっと苦痛から解放されたのに……
何故か生きている……
死んだのに、何故か
死と比べて、造作も無い机に書かれた罵詈雑言が、妙に気になった。
教室に入ってきた、わたしをいつも虐めてた女子グループは、見かける度鼻で笑うのに。今日は無視した。
わたしは、どうやら地縛霊になったらしい。
死んだのに、この場に囚われ続けるんだ。
雨漏れかな?
机には、雨粒が降り注いだ。
半袖
扇風機の風に煽られ、袖が揺れる。
暦の上では、春から夏に切り替わったと言っても、ここまで性急な変化なんて誰も求めてない
持ち込んだハンディタイプの扇風機は、サイドの骨組みが割れており、偶にそれが羽が当たりノイズが鳴る。
『アレ、風弱くね』
羽のスピードが弱くなり、遂に止まってしまった。。。
電池不足なのか、故障なのか。。。
早過ぎた夏に置いてかれた僕は、鍵のかかったドアの前で、家族の帰りを待つことになった。
透明
コップを爪で叩く。
コンコンと音が鳴る。
人待ちの暇つぶしを喫茶でする。
未だ来ない。
まだ来ない。
まだこない。
氷が大量にあったアイスコーヒーは、溶けて殆ど液体になり、無色透明で光を屈折させていた。
屈折させた光がテーブルにチカチカと描かれた。
結局、LINEで別れを告げてきた彼女はこなかった。
失われた時間
高校3年間は面白いほど記憶にない。
その時は、青春を侮蔑するような感覚で過ごしていた。キラキラっと眼前に拡がる物を、これまた物嫌いな友人とぶつくさ文句を言っていた。
楽しい青春ってのも良い物だなと、ここ最近は感じる。まあ、懐古した所で戻るわけじゃないけど。
子供のままで
ファミレスで塩分過多なポテトを食べ、見向きもしない親たちに応えるように、周囲を無視して走り回る。
僕は4種類の食器を両手に持ちながら、お客に差し出しにいく。キッチンを出て、1番、2番、3番とテーブルを過ぎて、目的の9番テーブルに向かう。
子供たちは僕にぶつかり、敷き皿と容器のセットの
スープ皿がバランスを崩して地面に突き、高い音を周囲に放つ。地面はコーンポタージュの濃黄色に染まる。
僕は子供が好きじゃない。