NoName

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6/7/2024, 7:48:11 AM

 あぁ、雨か。
 心の中で呟いたか、口に出したかは分からないけど、心底残念な気持ちだった。
 雨がリズムなんてもんを気にせず、ただ怒りを募らして、地面を叩きつける。

 ただ、わたしは、机に油性マジックで書かれた罵詈雑言を、消毒用のアルコールで雑巾を濡らして、掠め取ろうとする。

わたしは昨日死んだはずなのに……
出入り禁止の屋上に深夜に入って……
飛び降りて、やっと苦痛から解放されたのに……
何故か生きている……

 死んだのに、何故か
 死と比べて、造作も無い机に書かれた罵詈雑言が、妙に気になった。
 
 教室に入ってきた、わたしをいつも虐めてた女子グループは、見かける度鼻で笑うのに。今日は無視した。

 わたしは、どうやら地縛霊になったらしい。
 死んだのに、この場に囚われ続けるんだ。


 雨漏れかな?
 机には、雨粒が降り注いだ。

5/28/2024, 11:24:43 AM

半袖

 扇風機の風に煽られ、袖が揺れる。
 暦の上では、春から夏に切り替わったと言っても、ここまで性急な変化なんて誰も求めてない

 持ち込んだハンディタイプの扇風機は、サイドの骨組みが割れており、偶にそれが羽が当たりノイズが鳴る。
 
『アレ、風弱くね』
羽のスピードが弱くなり、遂に止まってしまった。。。
電池不足なのか、故障なのか。。。

 早過ぎた夏に置いてかれた僕は、鍵のかかったドアの前で、家族の帰りを待つことになった。
 





5/22/2024, 4:02:14 AM

透明

コップを爪で叩く。
コンコンと音が鳴る。
人待ちの暇つぶしを喫茶でする。
未だ来ない。
まだ来ない。
まだこない。

氷が大量にあったアイスコーヒーは、溶けて殆ど液体になり、無色透明で光を屈折させていた。
屈折させた光がテーブルにチカチカと描かれた。
結局、LINEで別れを告げてきた彼女はこなかった。

5/13/2024, 2:12:57 PM

失われた時間

 高校3年間は面白いほど記憶にない。
 その時は、青春を侮蔑するような感覚で過ごしていた。キラキラっと眼前に拡がる物を、これまた物嫌いな友人とぶつくさ文句を言っていた。
 楽しい青春ってのも良い物だなと、ここ最近は感じる。まあ、懐古した所で戻るわけじゃないけど。
 

5/12/2024, 11:41:57 AM

子供のままで

 ファミレスで塩分過多なポテトを食べ、見向きもしない親たちに応えるように、周囲を無視して走り回る。

 僕は4種類の食器を両手に持ちながら、お客に差し出しにいく。キッチンを出て、1番、2番、3番とテーブルを過ぎて、目的の9番テーブルに向かう。

 子供たちは僕にぶつかり、敷き皿と容器のセットの
スープ皿がバランスを崩して地面に突き、高い音を周囲に放つ。地面はコーンポタージュの濃黄色に染まる。

 僕は子供が好きじゃない。

 
 

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