朝日が昇る前に。アラームよりも先に。ましてや鶏すら起きる前に。夢見心地の飼い主を起こすのは濁音のついた鳴き声をあげる飼い猫のちー子だった。おはよう、ちー子と声を掛けると喉をゴロゴロと鳴らし、顔に頬ずりする。湿り気のある鼻が私の顔を嗅ぎながら必死にご飯を要求する。終いには鼻をご飯だ!なんて舐めてくるものだから、堪らず起き上がってちー子を見つめた。お互い見つめ合いながら一歩も動かない。ちー子のあの時の威勢はどこへ行ったのか。空の皿の前に立ってこちらを覗う。ちー子はその状態で短くか細く鳴いた。まるで幼い子供の地団駄に似ていたものだから私はつい笑ってしまった。
そんなに集めてどうするのかと、聞いた。小さな彼女は愛おしそうに貝殻を見つめながら言う。宝石みたいで綺麗だから集めて宝物にするの。笑顔で言う娘はくるりと砂浜へと視線を戻す。這いつくばって貝殻を探す娘を私は見守りながら幼少期の事を思い出した。幼き私は海に行っては泳ぐのそっちのけで貝殻を拾っていた。その度に叔父も愛ちゃんこれどうねなんて言って私の掌に貝殻を渡していた。たまに悪戯でスナガニを手渡してきた時にはびっくりして泣いて叩いた事もあった。叔父は職人気質の器用な人でそのとき拾った貝殻は綺麗に洗って豪華な貝殻のネックレスを作ってくれた。はしゃぐ私の頭を優しく叔父は撫でた。そんな亡き叔父との思い出。私は当時を思い出しながら娘に言う。家に帰ったら貝殻のネックレス、一緒に作ろうか。はしゃぐ娘がただただ愛おしくて頭を撫でた。
昔見ていたサイトが閉鎖されていた事を
今日初めて知った。
きらめく学生時代の懐かしい思い出。
もう一度、あの話を読みたかったな。
その些細な言葉で私の心は死に続ける。
「ふたりで飲みに行かない?」
酔ってお互い肩を組んで歩いた日も。
好きな女優の話でげらげら笑った日も。
ふたりで盛大な線香花火をした日も。
無邪気に笑う貴方の横顔を見てときめいた日も。
貴方が私の友達とお付き合いをすると分かった日から、もう二度と来ないと分かっていた。
貴方は私の友達であり、今や私の友達の彼氏。
私は友達の幸せを、そして貴方の人生を壊したくない。
開くことを躊躇っていた貴方のLINEを開いた。
「今度は3人で会おうね」