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そんなに集めてどうするのかと、聞いた。小さな彼女は愛おしそうに貝殻を見つめながら言う。宝石みたいで綺麗だから集めて宝物にするの。笑顔で言う娘はくるりと砂浜へと視線を戻す。這いつくばって貝殻を探す娘を私は見守りながら幼少期の事を思い出した。幼き私は海に行っては泳ぐのそっちのけで貝殻を拾っていた。その度に叔父も愛ちゃんこれどうねなんて言って私の掌に貝殻を渡していた。たまに悪戯でスナガニを手渡してきた時にはびっくりして泣いて叩いた事もあった。叔父は職人気質の器用な人でそのとき拾った貝殻は綺麗に洗って豪華な貝殻のネックレスを作ってくれた。はしゃぐ私の頭を優しく叔父は撫でた。そんな亡き叔父との思い出。私は当時を思い出しながら娘に言う。家に帰ったら貝殻のネックレス、一緒に作ろうか。はしゃぐ娘がただただ愛おしくて頭を撫でた。

9/5/2024, 2:51:02 PM