「最悪、教科書忘れちゃった」
私が見せてあげるから。
「最悪、絶対前髪切りすぎた」
そんなことない。可愛いよ。
「最悪、こんなんじゃ彼に嫌われちゃう…」
…私が、そばにいるのに。
「最悪…もう死にたい」
だめだよ。君がいなくなったら、私は。
すっかり君の口癖になっているそれは、私なんかじゃ消えない。消せない。
それでも、私が、君を守るから。
最悪な思いなんて、させないから。
テーマ 最悪
二年前のあの日、私が貴方に出会ったこと。
貴方の影さえも、強く輝いているように見えたこと。
モノクロだった世界が、色づいていったこと。
一年前のあの日、貴方はあの子と手を繋いで、海辺を二人で歩いてた。
その影を、引き裂きたいと思ったこと。
貴方色だった世界が、黒く染まっていったこと。
その日私が、握りしめていた言の葉を、
細かく噛みちぎって飲み込んだこと。
恋の味を、知ったこと。
今この瞬間、幸せになってねと、願っていること。
誰にも言えない、私だけの秘密だ。
テーマ 誰にも言えない秘密
狭い部屋で僕は一人、外を眺める。
電灯一つ無いこの部屋を照らすのは、外の光だけだ。
何かしたいけれどすることもないから、
ただ、ずっと外の世界に憧れている。
誰かが訪ねてくるわけでもないのに、
ただ、ずっと誰かを待っている。
外の世界の裏側を知るのは恐くて、
自分から誰かに会いに行くのは怖くて、
閉じこもって。動けなくなって。
それでも、外の世界は、
この部屋を照らし続けるのだった。
テーマ 狭い部屋
感情の渦に呑み込まれて、僕は動けなくなった。
その上から覆いかぶさってきた「幸せ」のヴェールは、ただ息苦しさを加速させていく。
ー何不自由無く生きて、それでもまだ求めるつもりか。
お前はもう十分に幸せだろう?
抜け出そうと足掻いても、呆れたように笑われて、取り残されていくだけだ。
僕らは、きっともうこの場所から逃れられない。
テーマ 逃れられない
両手で掬った水が、指の隙間から零れ落ちる。
腕を伝う水滴は、いつか君が流した涙に似ていた。
君のこころは、いつだって透明だった。
簡単に、どんな色にでも染まる。
僕のこころも、いつだって透明だった。
僕は君が、好きだ。好きで、嫌いだ。
君が、憎い。憎い…
黒い黒い内側を覆い隠すこともできないまま、
君を染めることすらできないまま。
テーマ 透明