匿名

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10/17/2025, 11:40:18 AM

部屋にかかった大時計の、淡々と時だけを刻む音。
君の音も聞かせてよと、砂時計をひっくり返す。
耳を近づけてみると、さらさらという音。
そのからだのなかの細かい粒子が、重力に耐えきれずに落ちてゆく音。
この音が途切れたら、あなたとはもう会えないかな


テーマ 砂時計の音

4/3/2025, 12:16:33 AM

空に向かって叫ぶと、あの太陽に届きそうな気がする。
空に向かって跳ぶと、届かないことを知る。

テーマ 空に向かって

3/31/2025, 9:56:42 AM

どこからかやってきた春風が君を連れてきたのか、
君が春という季節を呼んだのかは、分からないけれど。
気づくと君は桜のようにそこにいて、
私には一瞬にして春が来た。

テーマ 春風とともに

12/26/2024, 11:27:28 AM

変わらないものはないのに、
変わっちゃったねと、君は悲しむ。
変わらないものはないから、
まだ残っている「私」を必死に見つけて、君は喜ぶ。

変わっていくその姿も認められずに、
君たちはここでどうやって息をする?

テーマ 変わらないものはない

12/23/2024, 8:14:43 AM

ポケットから取り出したハンドクリームを焼きたてのパンみたいなその手の甲にしぼって、
「いい香りじゃない?」と彼女は言ってくる。
鼻を近づけるとほんのりゆずの香りがして、
なんか、すごく美味しそうで。
私は彼女の手ごと食べてやった。
ハンドクリームはもちろん、全然ゆずの味はしない。
ただひたすらに苦かった。でも、彼女の手は柔らかくて、甘くて、甘くて。
「恋の味がする」

ゆずの香りの入浴剤をお風呂に勢いよく投げ入れると、跳ね返ってきたお湯が頬を濡らす。
彼女の恥ずかしいんだか引いてるんだか分からない顔を、今になってただ思い出していた。

テーマ ゆずの香り

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