感情の渦に呑み込まれて、僕は動けなくなった。
その上から覆いかぶさってきた「幸せ」のヴェールは、ただ息苦しさを加速させていく。
ー何不自由無く生きて、それでもまだ求めるつもりか。
お前はもう十分に幸せだろう?
抜け出そうと足掻いても、呆れたように笑われて、取り残されていくだけだ。
僕らは、きっともうこの場所から逃れられない。
テーマ 逃れられない
両手で掬った水が、指の隙間から零れ落ちる。
腕を伝う水滴は、いつか君が流した涙に似ていた。
君のこころは、いつだって透明だった。
簡単に、どんな色にでも染まる。
僕のこころも、いつだって透明だった。
僕は君が、好きだ。好きで、嫌いだ。
君が、憎い。憎い…
黒い黒い内側を覆い隠すこともできないまま、
君を染めることすらできないまま。
テーマ 透明
薄い桃色の花々が、いつしか私を包んでいた。
いつか貴方がくれた花。その花びらを、私は撫でた。
淡い青色の海と空が、私の前に広がっていた。
いつか貴方と見た景色。私は遠くへ手を伸ばした。
ここは私の楽園で、貴方との思い出で溢れる場所。
でも、それなのにどうしてか、貴方だけがいない場所。
甘い暖かい春風が、私の背中を押していた。
貴方の匂いがした気がして、私は後ろを振り返る。
テーマ 楽園
「何となく」なんて理由で夜中に家を出ても何も言われなくなったのは、いつからだろうか。
この満天の星空を見ても何も感じられなくなったのは、いつからだろうか。
手を伸ばせば、幾らかは掴めると思っていたのに。
上を見上げれば、いつかは届くと信じていたのに。
いつか、私が星に願ったこと。
なぜか思い出して、意味もなくそれを呟いてみる。
目の前を流れ星が、ぱっと輝いて消えていったような気がした。
テーマ 流れ星に願いを
僕は僕にルールを課した。
君のことを考えてはならない。
君の近くに行ってはならない。
君と話してはならない。
君と目を合わせてはならない。
君を、君のことを忘れる。忘れなくてはならない。
…忘れなくては、ならない、のに。
テーマ ルール