『静寂の中心で』
まぶたを閉じれば 宇宙は広がり
孤独が現れ 自転を始める
五感を失い あなたを思う
ため息ひとつで 消えてく残像
この世はうるさい 自動車ばかり
生きてる会話は 化石になった
静寂の中心で 壊して欲しい
あたらしい引力に 導かれたくて…
夜道が亀なら 夜風は鳥か
ごう音鳴らして 列車の群れが行く
自販機の村は 慰めの押し売り
すれ違う異星人 殺したい…衝動
親せきの顔をした 満月が憐れんだ
家々は灯を消し 漆黒に星を誘う
静寂の中心で おばけになった
失くすならいらない 朝なんかいらない
静寂の中心で 壊して欲しい
あの強い引力に ゆだねて…いいのかな
『秋の訪れ』
夏のような元気がない
道の草が秋を告げる
そっと白い花をつけて
悲しそうに揺れていた
半袖だった子どもたちが
衣替えで下校してた
そこに昔の自分を見つけ
生きてきたこと、後悔した
店は栗や松茸ごはん
そんな素が売られ始める
家族なんて感じぬように
急いで出たら茜雲
少し寒い風が懐く
淋しがりの子猫のように
帰る家はあったはずで
忘れたように
そこに……いたかった
『旅は続く』
まぶた越しでもまばゆい日差し
通り過ぎてく自動車の音
寒くて1枚羽織ったけれど
震える心は氷点下
まるで旅でもしているような
見慣れた町のよそ行きの朝
ほどいた過去はもつれるけれと
編み直したい糸がある
コーヒー飲めば苦みのなかに
甘い言葉が溶け出してくる
頬にながれるしょっぱい雨は
未来を信じる旅人か
ランチはどこで食べるか思案
帰り支度は明日に聞こう
透けてく身体と移り気な風
冬には早い旅は続く
『モノクロ』
滲んだような 単色の
日々の彩り しょっぱいね
愛は転がる 意志となり
濃淡付けてく 筆となる
風の匂いに 誘われて
花を手折れば 枯れてゆく
眺める空が 落ちてくる
どうにもならない 過去になる
ピコン!とスマホは 言うけれど
期待はいつも モノクロのまま
『靴紐』
靴紐が ほどけているよ
それが言えずに となりを歩いた
気になって 言いたいけれど
中途半端な 関係だから?
靴紐が ほどけているよ
誰も困らない どうでもいいこと
転ぶかも? 心配してる?
そこまで親しい 関係じゃない
靴紐が ほどけているよ
言えば「ありがと」 それで終わりなんだ
世の中って 簡単なのに
出来ないことって 多いと思う
靴の中 石が入っちゃった
それでこっそり 気づかせてあげた
優しさは 自分のために
スッキリしたから お腹がすいた