『空白』
空白の色が 白ならば
砂浜にたたずむ ワンピース
約束の時間 過ぎたって
潮風を噛んで 待ち続ける
空白の色が 黒ならば
夜道を歩いてる 野良猫か
人間なんぞにゃ 媚びないが
ほどこしくらいは 受けてやる
空白の色が 赤ならば
隣に住んでた お姉さん
いっつも真っ赤な ルージュひき
突然消えた 人だった
空白の色が 青ならば
それは小雨に 濡れる窓
いつまで経っても 忘れない
愛してくれた あの瞳
空白の色が 君ならば
おなかをすかした 子どもだよ
嘔吐をするまで 食べたくて
埋めたい愛が 足らなくて
『台風が過ぎ去って』
大型台風 進路予想図
住んでる場所へ コースを変えた
ホームセンター スーパー賑わう
菓子パンカップ麺 どんどん売れてく
カンカンガタガタ 雨戸が閉じられ
意外に風は まだ強くない
しだいに風が 空中で鳴いて
竹やりみたいな どしゃぶりになる
強風、強風 ブンブン、ドドド
そして停電 復旧、停電
そんな、こんなの 深夜が明けて
災害残して 台風一過
近所の人とは 情報交換
停電長びき 冷凍庫が…死ぬ
台風が過ぎ去り 日常が来る
人々は忘れる 「何かありましたか?」
『ひとりきり』
ノイズみたいな 縦線を引く
筆圧強めで 心の画用紙に
ついでに部屋から 夜へとはみ出る
そうか深夜は 黒に優しい
変えれぬ過去は 小説になる
時間が空くと ついつい読んでいる
見知らぬ未来が 通り魔に見えて
そして手首に 赤い川がある
声も涙も 解凍…出来ない
不気味なオバケは 無性に喉が渇く
定義、定理を さまよいながら
生ゴミみたいな 自己に同情
在庫整理も 高級品も
売られていつか 捨てられ消える
気づかれないまま 私は残る
ひとりきりだと 風呂さえいらぬ
季節はめぐり きつねとたぬき
むし歯の居場所が 非常階段
死んでもいいのに 治療はしたい
ひとりきりでも 縦線じゃない
『フィルター』
固定観念 色眼鏡
偏見 思い込み いろいろあって
脳にも関所 フィルターがある
主観に客観 私的嗜好
天気みたいに 答えも変わる
それでも誰かを 評価してしまう
フィルター自体は 悪くない
理性は心の 番人にもなる
そのままばかりじゃ 生きてはいけない
それでもいつか フィルターが
分厚くなって 通せんぼする
傷つかないけど 死んでる世界
『仲間になれなくて』
群れるのが嫌い 二人組が嫌い
三人組は もっと嫌い
自分の時間が なくなるのが嫌い
約束したら 眠れなくなる
会ったら気を遣い 無言だけは避ける
道化を演じ 透明になる
LINEはいつも すぐに既読…返信
私のメールは 既読すら無し
ひとりが好きで 孤独は嫌い
仲間は好きで 大勢はイヤ
自由が大好きで 束縛も好き
必要とされたら がんばり過ぎちゃう
仲間になれなくて 安心してる
なのに自己価値 暴落してる