やるせない気持ち
この気持ちをどこにぶつければいいのだろうか。
空の瓶にでも吐いてやろうか。
毎朝つけるテレビには毎回嫌なニュースが流れる。
それに同情しているのか自分も辛くなる。
どこにぶつければいいのか。
知人に言っても空気を悪くしてしまう。
どこにぶつければいいのか。
結局、何を考えようがやるせない気持ちはどこにも言うことができないんじゃないか。
こういう考えを吐けないことがやるせない気持ちなんだろう。
#26
海へ
ワイヤレスイヤホンはあまり好きじゃない。
耳につけている感覚が鈍くなるから。
だから、有線のイヤホンを使う。
スマホを開き、プレイリストを再生する。
曲が流れ、リズムをとる。
砂が足裏に触れて少しくすぐったい。
向こうを見ると、遠くから人影が見えてこちらに向かってくる。
... すれ違う瞬間
耳元で囁いた 君の声
波音が掻き消したの …
耳元に息が少しかかって、ほんのり赤くなる。
波音で何を言ってるかは聞こえない。
でも、自分の腕を掴み上げてそれに連れて自分は立ち上がる。
今なんて言ったの?
ねぇお願いよ、もう一度聞かせて。ホントは知ってるけど。
「このまま行こう。海へ。」
#25
裏返し
ねぇ。それ裏返しだよ。
え?それ、裏返しじゃないの?
違うんだ。
じゃあそれはなんで、裏返しなの?
自分の中での流行…か。
珍しいね。
誰にでも裏はあるけれど、それを流行にしてるんだ。
君って面白いね。
私も裏返しにしようかな。
#24
鏡
今日も美しいね。
全てをうつす硝子。
リッピアの形をした枠。
全てが美しかった。
触れるとすぐわれてしまいそうで。
ヒビが入ってしまいそうで。
触れたくても触れることができない。
僕をうつすのになぜ君は触れさせてくれないのだろうか。
今日も僕をうつし続ける。
#23
いつまでも捨てられないもの
そっと私を見つめる深い青色。
透き通るような肌。
フリルがついた可愛らしいドレス。
そして、太陽の光を集めたかのような金髪。
そんな貴方は品があるけれど、どこか可愛らしかった。
雪が降ったら貴方に手袋をつけた。
雷の時は、貴方のベッドの中に潜った。
どれも捨てられない淡い思い出。
貴方とお茶会を開いた公園に貴方を置いて帰ってしまった時も必死に探した。
それくらい貴方が大事なの。
お父様やお母様は、薄汚れた貴方よりも綺麗な子の方が良いと言って、新しい子を私に勧めてくるの。
でも、やっぱり貴方じゃないと私じゃないの。
ずっと手離したくない。
私が歳を老いても、貴方は磨けば美しくなる。
私の代わりに生き続けて欲しい。
だって貴方は私なのだから。
だれも、いつまでも捨てることが出来ないわ。
#22