誇らしさ
私の誇らしさとは一体なんでしょう。
真っ直ぐと自由に伸びている羽でしょうか。
それとも光り輝く羽でしょうか。
どれも大切な私の一部ですが、
「貴方の誇らしさとは何ですか。」
と聞かれると、「私の羽です。」とは言えないのです。
では、私の誇らしさとはなんでしょう。
この小さな体で世界中を飛び回ることでしょうか。
魔法を使って自然を喜ばせることでしょうか。
どれも得意な事ですが、
誇らしさとは少し違います。
私の誇らしさとは、誇ることがない事です。
そして、私がこれからするべき事は誇ることを探すことです。
誇る事がないと誇らしさもうまれないのですから。
貴方の誇らしさとは。
#21
夜の海
静かな波の音が私の心を宥めるように。
落ち着かせるように。
何も感じさせないように。
砂が煌めき私に触れて欲しいという。
その上にふわりと座ると波が近づく。
波も私に触れて欲しくて水で足を覆う。
手で撫でてみる。
照れたのか恥ずかしかったのか、それとも嫌だったのか分からないが少し波が引いた。
宛名のないシーグラスが月光でぼやけるように光る。
波が私に向かって押し寄せる。
こっちにおいで。と言わんばかりに。
従わせるように。
こっちに、こっちに、と。
静かな波の音が私の全てを覆うように。
こもるように。
光が通らないように。
溶け込むように。
夜の海にもっと溶け込むように。
#20
自転車に乗って
「ベラ。そこに座って僕にしっかり掴まるんだよ。」
「ヒューイ。私、少しだけ怖いわ。」
「大丈夫だよ。しっかり捕まっておけば怖さなんてなくなるよ。」
「そうね。」
ヒマワリ畑の間にただずっと続く道を君と走る。
夕日が僕たちを照らしヒマワリに負けないようにしてくれる。
やわらかい風が僕たちを撫でる。
「ヒューイ。私、ヒマワリが一番好きな花なの。」
「ベラとヒマワリは物凄く合うよ。でも、ベラはヒマワリよりも美しい。」
少し照れながら笑う君は、本当にヒマワリよりも際立って美しかった。
「ありがとう。ヒューイ。」
自転車に乗って走り続ける。ただこの道を。
やわらかい風が撫ですぎて君は少し舞う。
「もう少しスピードを上げようか。」
「ヒューイ。私もっと空と近くなっちゃうよ。」
「大丈夫さ。ベラ。君の夏は今ここにある。このヒマワリ畑で君は一番美しい。」
「ヒューイ。夕日が眩しいね。」
「綺麗だね。」
来年はもっと多くの君と一つの夏を過ごしたい。
また自転車に乗ろう。
#19
心の健康
貴方が怪我をしたら私が手当をした。
手を怪我した時は、川の上流で手を冷やした。
揺らぐ透明な液体の中に少しだけ赤が広がる。
混ざった液体を手ですくう。
喉が乾いたので液体を飲む。
その瞬間心が揺さぶられた感覚に落ちる。
水分が足りない私にはこの液体が必要だった。
水分が足りない中これからどうすれば生きれるかを考えるうちに心が穢れていった。
それでも諦めずに貴方を手当し続けた。
その代償に私の心を貴方に手当をしてもらった。
お互いがおたがいに手当し合う。
でも、貴方が混ざった少し赤い不透明な液体を飲むことが私に1番よく効く治療でした。
もっと飲んでいたい。
少し苦いが飲んでいたい。
心の健康維持のために。
#18
鐘の音
やわらかみのある祝福の鐘の音が聞こえる。
我が国にお姫様が生まれました、
鮮やかな青色の瞳で、陽の光が集まったかのような金髪。
それはもう全てが美しかったのです。
鐘が年をとるのと同じようにお姫様は成長していく中で好きな物を見つけました。それは、自分の城にある鐘でした。
鐘は国民に栄光の鐘と呼ばれていた。
鐘の凛々しくやわらかさがあり、でも少し重みのある音がお姫様にはとても興味をそそられたのです。
栄光の鐘と呼ばれるのと同時に奇跡の子とも呼ばれている方がいました。
栄光の鐘が鳴ったその瞬間に生まれる子は「奇跡の子」だと古く昔から言い伝えられていました。
その奇跡の子がお姫様なのです。
栄光の鐘が鳴るのは三年に一度でした。
奇跡の子が生まれてから6回目の鐘の音が鳴ると奇跡の子は国民の栄光を背負い、鐘の下で旅立つというしきたりがありました。
青い瞳が暗くなる瞬間まであの鐘の音と共に私自身を見守ろうと決めました。
わたくしの最期は大好きなあの音に包まれながら終われることにとても感動しています。
鐘が鳴り終わるその瞬間まで。
#17