残り香

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6/23/2024, 3:31:04 PM

子供の頃は

全て、自分が描いた理想的な人生だった。
幼い頃から、自分は周りと少し違かった。

歯車が合わなかった。

白くて、真っ白で、静かなキャンバスに描いた理想的な僕の人生図は、黒かった。
よく、夢がないと両親には言われていた。

子供の頃は理想的な人生を描いていただけだった。

でも、今は違う。

理想的な人生は叶うわけがない。
そう分かっていても、描いてしまう。

止められないんだ。

子供の頃と違って、結末が分かっていても、理想的な人生図をまだ求め続けてしまう。

子供の頃から変わらないな。僕は。

#11

6/18/2024, 11:50:23 AM

落下

ああ、どこまでも落ちていく。
このまま落ちて終わってしまうのだろうか。
それとも、ずっと永遠に落ち続けるのだろうか。

空はずっと続いて、私からまとわりつくのをやめてくれないのだろうか。
手で触れようとしても、落ちてるので掴めない。
そもそも物なんてない。

ああ、まだ落ち続ける。
私が落ち終われば白い花が赤く彩やかに光るだろう。

ああ、先が見えない。
まだ落ち続ける。

いつ落ち終わるのだろうか。
一瞬で終わってしまいたい。

#10

6/15/2024, 3:51:57 PM

好きな本

古びたページの匂い。
黄ばんだ小口。
折れ曲がった帯。
少しふにゃついている角。

大好きな本。

僕の部屋の床には本が積み重なっているタワーがいくつもある。
その積み重なっている本はどれも大切な本で僕の宝物。

でも、本は僕一人に愛して欲しいから、早くまた開いて。とお願いをしてくる。
僕は本が好きなんだ。
どれも好きなんだ。

本は本だから、どれか1冊を決めろなんてできない。
全ての本を抱いて寝たい。

#09

6/15/2024, 8:58:45 AM

あいまいな空

雲がかる空は、僕の気持ちみたい。
僕の気持ちを表現する。

白いキャンバスに白い絵の具を垂らす。
筆で軽快なリズムで跡をつける。

白に白でも色がそれぞれ違う、あいまいな色だ。

それは僕に似すぎている。
この雲は僕であり、雲は僕である。
雲の形は様々なんだ。

あいまいな空はない。
あいまいさは雲なんだ。

#08

6/13/2024, 11:36:42 AM

あじさい

今年の紫陽花は、一つ一つの花が美しい、てまり咲き。
凛とし、縹色が疎らに弱かったり、強かったり。
その姿に魅入られた。

貴方にそっくりで。

紫光りする黒髪、涙で潤い曇りがない瞳、透き通る肌。
その全てに私は魅入られ、鼓動が高まった。
そんな、貴方が私の傍にいる。
美しすぎる貴方に触れられるだけで幸せだった。


人間は情が移るもの。
貴方は、私に振り向き続けなかった。
私だけの美しい貴方なんだ。

私だけの紫陽花になってはくれないだろうか。

手をひき、貴方に口付けをする。
息がすぅと抜け、てまり咲き。

雨の水滴が花弁につく。
ゆっくりと指先ですくい口にすると、しょっぱかった。

私は感動した。他にも、涙せず笑って欲しい。
もっと、それを見たいんだ。もっと。


今年の紫陽花は、貴方に似すぎている。
あじさいはこれからも美しく雨に濡れ、咲き誇る。

#07

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