滝谷(shui)

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5/13/2024, 10:18:48 AM

【失われた時間】

 もう少しだけ、私は幸せなんだと思える、盲目な夢を見たかった。

5/11/2024, 10:53:37 PM

【モンシロチョウ】

 あの日、サナギの殻を破らなければ、
   今も幸せな夢を見れたのだろうか。


【愛を叫ぶ】

「お父さんのバカァアアア!!!」

 と叫ぶ君を見て、僕は笑ってしまった。
 その言葉の中に、たくさんの『会いたい』が詰まっていたからだ。

 だから、退院したら、真っ先に君に会いに行く。
 僕も会いたかったと力一杯に抱きしめたいから。

5/7/2024, 8:34:30 PM

【初恋の日】

「俺、春奈が男だったら良かったと思ったよ。そしたらお互いに、傷つくことなんてなかったのにな」

 木陰に隠れていた私の耳に届いたのは、少し震えた、青木の寂しそうな声だった。

 春奈は私の親友だ。
 親友が青木に振られた。その事実を受け止めたとき、怒りとも、悲しみとも違う不思議な気持ちが渦巻いていた。
 春奈が、そんな事、と言いかけて背を向けて走っていく。ああ、きっと泣いてるんだ。
 私は春奈を追いかけるべきだ。親友だから。
 そうわかっていたのに、私は動かなかった。

「追いかけねーの?」

 木の横から、青木が顔を出した。不思議そうに私を見ながら。コイツ、いつから気づいていたのか。

「アンタが追いかけたら?」

 押し付けるように私がいうと、青木が苦笑いした。

「今、彼女をふったとこなのに?」
「女より男のが好きだなんて、嘘じゃん。この嘘つき」
「それはお前のほうだろ。早く追いかけて抱きしめてやれよ」

 ……青木に言われて、グッと黙り込む。
 そう、私も嘘つきだ。男より女が好き、と、まだ春奈に打ち明けていなかった。
 春奈だから、打ち明けられなかった。
 教えたら、私は彼女に親友以上の関係を求めたくなってしまうから。

 でも。

「初恋に正直になろうとした春奈を、初恋を嘘で隠し通したい私が触れてしまったら、汚してしまう気がして嫌なの。触りたくないし、触れないのよ」

 きっと私にしかわからない、変なプライドが邪魔してる。
 今だってーーそう、今だって。彼女が振られて、こんなに安心してしまったのに。それくらい私は汚い人なのに。

「お前が春奈にふられてくれたら、俺の恋も前に進めるんだけどな」
「意味わかんない」
「だよな」

 私たちの不器用な恋は、いつだって遠回りする。
 こんなに辛いなら初恋なんて知らなきゃ良かったと、蹴り飛ばしたくなるくらい。

5/6/2024, 9:31:35 PM

【夏】

 終戦の日。
 私は原爆で焼けた母を、まだ、抱きしめられずにいた。

4/20/2024, 12:19:24 PM

【何もいらない】

 「お前の作った物語、つまんねぇよ」
 「どうせ難しいって。時間の無駄じゃん」
 「めんどくせーわ」

 そう言ってネガティブな言葉に引き裂かれた紙。
 僕はそんな骸を見ながら、喉の奥がひりつくのを感じていた。

 目頭が熱い。
 もうゴミにしかなれない、紙を拾う手が震えた。

 言葉は、うまく出てこない。
 どうせ上手くないのなら、もう、言葉なんて、湧き出てこようとしなくていいのに。
 もう何も、やらなきゃいいのに。

 泥だらけに汚れたゴミを拾い集めて胸元に押し付ける。服だけじゃなく、地についた膝まで汚れた。
 その姿が自分にお似合いなんだろう。
 背を丸めながら、息を殺して泣いたんだ。
 もう、誰にも、何にも言われたくなくて。
 

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