貸してくれた本と同じ涼しさが香った。
夏の終わりのように残る
甘ったるさが心地よかった
熟した苺のようで、熟れない梅のようで
溶けない苦さが私を依存させた
1枚、また1枚
最終章まで終わらない香りの強さは
すれ違い消えていくあなたを思い出させた。
記憶の中で眠ることもせず
ふと通りかかる、顔も知らぬ誰かを追う
苦しさを知った
変わらない夏が来る
気になる人ができたんだ。
笑ったり怒ったりうるさかったりする人。
3回目のデートの帰り
歩いていきたいところがあるって
表参道の駅を過ぎて
通りの裏の自動販売機
ほうじ茶が飲みたくなったって言って
いつもブラックコーヒーばっかのくせに
1口飲んで、温かいよって
手ぶくろみたいにずっと暖かかった。
---手ぶくろ---
波が寄っては手を引かれ
泡音を追いかけ手を引いて
不揃いな欠片を探して
離した指の間から零れた
砂粒の白に反射して
きらきら揺れる水面のように
ふわふわ踊る海月のように
透き通る碧の奥
闇に隠れた珊瑚の中で
このまま2人溶けてしまえたら
╶╶╶海╶╶╶
私自分を好きになるから
私自分に自信を持つから
私沢山挑戦するから
私諦めたりはしないから
私たくさん考えて
私沢山学ぶから
忘れる以上に記憶して
いっぱいの楽しいを教えるから
私ってとても素敵なんだ
私って唯一無二なんだ
そう胸張って言えるように
時間はかかるかもしれないけど
必ずあなたを愛しにくるから
待っててね、私。
―――待ってて―――
土手を流れる穏やかな青
風に揺られても真っ直ぐ伸びる緑
空高く舞い上がる満月のような白
フードコートで頼んだクレープの
分け合いたくなるような甘ったるさ
ゲームセンター、絶妙な香ばしさの
キャラメルポップコーン
ラベルテープを間違えて塩辛くなった
あなた好みのミルクカフェラテ
太陽よりも早い雀の挨拶の声
私を追い越す色鮮やかな鈴の音
走り回る愉快な笑いと幼い響き
私の見るもの聴こえるもの
私がしたいことできたこと
私が考えること知りたいこと
私の世界に映るもの全て
あなたに届けたい―――