月に願いをかたる。
明日も生きられますように。
好きな人と話せますように。
テストで百点とれますように。
また、あなたにあえますように。と
それは、誰でもできることだけど
とても難しいこと。
だって、優しくないと願いなんて語れないから。
降り止まない雨を
気持ちに例えたら
不安なのか孤独なのか
それとも継続的な愛なのか
私たちにはわからない
でもわからないままで
いいのかもしれない
「逃れられない悪夢をみたことは、あるか?」
ある博士は、聞きました。
「……現実的では、ないな。なぜ?」
もうひとりの博士が聞きました。
博士は、こういいます。
「いや、嫌いなやつに強制的に悪夢をみさせたいな、と」
「はは、冷静な君らしくないな。またあいつのことか。」
『あいつ』と言うのは、博士の研究結果をいつも否定してくるライバル博士です。
「そうさ。君だって嫌いだろう?」
「まぁな。だが俺は、あいつなんかより残業の方が嫌いだ。はやく資料整理を終わらせよう。」
「君にとって逃れられないものは、残業ということか。」
「あー、おもしろい、おもしろい。さ、早くしよう。」
今夜悪夢に魘されるとしても。
また明日。
この言葉って、幸せな人にしか
本心から言えないよね。
あの時、透明なきみをみつめてた。涙をながす、きみをみた。でも涙もきみも透明だから、だれも気づかなかった。気づけなかった。でもこえもめせんも透明だからきみがいることすら気づけなかった。だから、きみが死んだのを知ったのは、葬式がある二日前だった。
真っ白の棺できみが眠っているらしい。
たくさんのお花を添えて火葬した。
さよなら顔も知らないきみ。
でも、後悔があるとしたら「あの時」、
きみがきみが僕をどう思っていたか。
あいして、くれていたのか。
それが知りたかった。
さよなら、美しききみ。
さよなら、わたしの愛したきみ。
さよなら、透明なきみ