Noname

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「逃れられない悪夢をみたことは、あるか?」
 ある博士は、聞きました。
「……現実的では、ないな。なぜ?」
 もうひとりの博士が聞きました。
 博士は、こういいます。
「いや、嫌いなやつに強制的に悪夢をみさせたいな、と」
「はは、冷静な君らしくないな。またあいつのことか。」
 『あいつ』と言うのは、博士の研究結果をいつも否定してくるライバル博士です。
「そうさ。君だって嫌いだろう?」
「まぁな。だが俺は、あいつなんかより残業の方が嫌いだ。はやく資料整理を終わらせよう。」
「君にとって逃れられないものは、残業ということか。」
「あー、おもしろい、おもしろい。さ、早くしよう。」
 今夜悪夢に魘されるとしても。

5/23/2024, 11:02:46 AM