毎日毎日、同じ繰り返しの中で生きていたら、感情の起伏がなくなった。
別に、この生活が嫌でも無いし、抜け出したいわけでも無い。
そんな感情はきっと過去に置いてきたんだから。
明日、もし晴れたら、墓参りに行こう。
あなたが眠る場所に、あなたとの思い出を語りに。
私の時計は、あなたがいなくなった日に止まってしまったままだから。
お題『明日、もし晴れたら』
注文して中途半端に飲んだコーヒーは冷めて、お世辞にも美味しいと言いたくない状況になっている。
車があれば簡単に来られるが、電車とロープウェイを乗り継いでやっと来られたんだから、長居しようなんて思うから迷惑な客になるんだ。
ささくれた心を少しでも慰めようと此処に来たのに、ささくれを傷に変えていく思い出ばかり。
もうダメだ。帰ろう。
残りのコーヒーを飲み干してから、伝票とカバンを手に席を立ち、窓を見た。
綺麗。
ただ、純粋にそう思えた。
心が、ささくれていても、弱っていても、この山の上にあるカフェからの夜景はキラキラしている。
微笑んだ自分の目から涙が流れた。
【みーつけた】
カフェから出てすぐに届いた1件のLINEに目を奪われていると、背中が温かくなった。
「どれだけ探させるんだよ」
お題『1件のLINE』
「どうする?もう一軒いくか?」
どこへ向けた言葉なのか、空に飛んだ声に私もよくわからない返事を誰もいない方へ投げた。
「うーん?」
私の言葉に何の返事もなく、ただ、誰のものかわからない見知らぬ声や音だけが流れていく。
私は、ただ何も考えずに、空を見上げた。
星空なんて見えるわけもない、ただ暗いだけの空だった。
「おいって、聞いてたか?どうするよ?」
繋がれて引き寄せられた左手が、真っ赤になってほてっていくような、ドクドクしているような、恥ずかしい感覚に陥った。
私はこの人が好きなんだと、他人事のように思った。
お題『星空』
黒いビジネススーツで営業。
今日も頑張った、と自分を褒める気にもならず、横断歩道の信号待ちで空を見上げた。
月からの風を感じ、目を閉じる。
月だけが私を包み込んでくれる、許してくれる。
毎日そう思いながら夜空を見上げる。
「またか。」
よく知っている男の声が後ろから聞こえた。
「またよ。」
私は答えた。
「俺じゃダメなのか。」
私は、その言葉を無視して歩き出した。
彼がダメなのではない、私がダメなのだ。
仕事を変える勇気も、心に素直に生きる強さもない。
「いい加減、俺と一緒に進む気にはならないのか。」
私はあなたと太陽の日差しのもとを、堂々と歩く資格はない。
私は彼の手を振りほどいた。そして、手を強く握りしめて、歩いた。
家にたどり着いた時、握りしめた手から、血が出ていた。
手の痛みはなかったが、こころが痛くて、涙が流れた。
この世の中に、心に忠実に生きている人はどれくらいいるのだろう。
お題『日差し』
君はいつも教室の隅にいた。
卒業式の後、謝恩会会場で君を探した。その時も壁沿いを先に探した。
「どったの?誰探してる?」
友人に聞かれて、君の名前を告げると、謝恩会は欠席だと言われ、がっかりしたことを覚えている。
だから、君に最後にあった日、いや、君を最後に目撃した日は高校の卒業式だ。
あれから10年が過ぎた。
君は元気なのだろうか。
朝食を食べながら、君のことを思い出していた自分が不思議だった。
「本日からこちらでお世話になります。よろしくお願いします」
目の前にいるのは君のような、君じゃないような。
なんだか、不思議な気分だ。
お題『君と最後に会った日』