「どーしてこうなったわけ?」
尋ねられた複数の男女が口々に理由を言ってくるが、何も信憑性のない話しだ。ここにいる人間全員酔っ払いか。
俺がくる前に、全員出来上がるとはヒドイやつらだ。
しかし、たかだか2時間でこの惨状とは。一体どんだけ飲んだんだよ。
「あー遅かったね。おっつかれー。今日はみんなでこれから10年後、20年後どうしたいか話してたんだよ。」
「俺にはここにいる全員が酒に飲まれる未来しか見当たらないが」
俺は一体、この後どこまで介抱したらイイんだろう?
お題『未来』
兎にも角にも暑い。
夏は終わったはずなのに、猛烈に暑い。
いつになったら、
「過ごしやすい!お昼休みの公園ランチ」
が戻ってくるのか、誰か教えて欲しい。
過ごしにくいからと言って、社内で昼休みをするという選択肢はわたしにはない。
昼休みなのに、電話応対、パワハラ取締役の対応、セクハラ上司との会話、そんな時間はまったく休憩じゃない。
昼休みは誰にも邪魔されず、ゆっくりごはんをたべて、ほっこり好きな本を読む時間だ。
誰にもこの幸せな時間を奪う権利はないはずだ。
季節よ。もう少しマシな気候にしてください。
そんなくだらないことを考えながら、手元の本を開いた。
お題『好きな本』
暑い。
兎にも角にも暑い。
まだ、6月なのに夏ですか?
それか、なにかの罰ゲームですか?
ったく、太陽さんよ。そんなにジリジリ、ギラギラ照らさなくていいから、ちょっとは雲に隠れたりしてくれないかな。
私は右手を軽く目の前にかざして空を見上げた。
再び歩き出そうとしたところ、左手に自分の体温と違う何かを感じた。
「よお」
聞き覚えのある声がした方に目を向けて、すぐに手を振り払った。
「変質者みたいな行動は控えましょう」
だれが変質者だと言いつつ、また手を重ねてくる。
「あじさいみたいな人に騙される私じゃないわよ」
「それ前も言ってたな、意味わからんけど」
私はわからなくてもいいわと言いつつ、手をふりほどいた。
あじさい、別名で七変化、花言葉は移り気。
見つけた女でコロコロ変わる、取っ替え引っ替え男に転がされるのはまっぴらよ。
お題『あじさい』
「お久しぶりですね。」
そう言われて、私はとてつもなく驚いた。
流れるような動作で出されたのは、琥珀色の液体が入ったロックグラスだった。
「えっ、あっ、はい。あ、ありがとうございます。」
数年前に数回来ただけなのに。やっぱりバーテンダーはすごい。私のような、できない営業とは訳が違うねぇ。
前にここに来ていた時は、酒の好き嫌い話で大盛り上がりしていたな。
絶対に飲めない酒。
これさえあれば元気になる酒。
なぜこれが好きで嫌いで。
そんな話が名前も知らない相手とできる場所はここ以外には見つけられなかったけど。
「スコッチウイスキー好きな彼はこちらに顔を出していますか?」
「今週はまだ来てないですね。」
会えるかな?会えないかな?
私のこと覚えているかな?覚えていないかな?
思春期の子供みたいなワクワクを募らせながら、ロックグラスを傾ける。
もし会えたら、私もアイラ系のウイスキーが飲めるようになったと伝えたいな。
お題『好き嫌い』
この海だけが私を見ていてくれる。
私は法では裁かれないが、罪人だ。
私が彼から逃げたから、こうなったのだろうか。
何も告げずに彼の許を離れた罰なのか。
全てを隠したのがいけなかったのか。
ただ一つわかっているのは、私のせいだということ。
この海の前で、生んであげられなかった子に毎日謝っても、許してはもらえない。
あの街で彼に出会い、彼を愛した私が悪かったんだ、きっと。
お題『街』