通りすがりの字書き

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「お久しぶりですね。」
そう言われて、私はとてつもなく驚いた。
流れるような動作で出されたのは、琥珀色の液体が入ったロックグラスだった。
「えっ、あっ、はい。あ、ありがとうございます。」
数年前に数回来ただけなのに。やっぱりバーテンダーはすごい。私のような、できない営業とは訳が違うねぇ。

前にここに来ていた時は、酒の好き嫌い話で大盛り上がりしていたな。
絶対に飲めない酒。
これさえあれば元気になる酒。
なぜこれが好きで嫌いで。
そんな話が名前も知らない相手とできる場所はここ以外には見つけられなかったけど。

「スコッチウイスキー好きな彼はこちらに顔を出していますか?」
「今週はまだ来てないですね。」

会えるかな?会えないかな?
私のこと覚えているかな?覚えていないかな?
思春期の子供みたいなワクワクを募らせながら、ロックグラスを傾ける。

もし会えたら、私もアイラ系のウイスキーが飲めるようになったと伝えたいな。


お題『好き嫌い』

6/13/2024, 5:47:02 AM