通りすがりの字書き

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7/6/2024, 7:19:44 AM

「どうする?もう一軒いくか?」
どこへ向けた言葉なのか、空に飛んだ声に私もよくわからない返事を誰もいない方へ投げた。
「うーん?」
私の言葉に何の返事もなく、ただ、誰のものかわからない見知らぬ声や音だけが流れていく。
私は、ただ何も考えずに、空を見上げた。
星空なんて見えるわけもない、ただ暗いだけの空だった。
「おいって、聞いてたか?どうするよ?」
繋がれて引き寄せられた左手が、真っ赤になってほてっていくような、ドクドクしているような、恥ずかしい感覚に陥った。

私はこの人が好きなんだと、他人事のように思った。


お題『星空』

7/2/2024, 2:06:18 PM

黒いビジネススーツで営業。
今日も頑張った、と自分を褒める気にもならず、横断歩道の信号待ちで空を見上げた。
月からの風を感じ、目を閉じる。
月だけが私を包み込んでくれる、許してくれる。
毎日そう思いながら夜空を見上げる。

「またか。」
よく知っている男の声が後ろから聞こえた。
「またよ。」
私は答えた。
「俺じゃダメなのか。」
私は、その言葉を無視して歩き出した。
彼がダメなのではない、私がダメなのだ。

仕事を変える勇気も、心に素直に生きる強さもない。
「いい加減、俺と一緒に進む気にはならないのか。」
私はあなたと太陽の日差しのもとを、堂々と歩く資格はない。
私は彼の手を振りほどいた。そして、手を強く握りしめて、歩いた。

家にたどり着いた時、握りしめた手から、血が出ていた。
手の痛みはなかったが、こころが痛くて、涙が流れた。

この世の中に、心に忠実に生きている人はどれくらいいるのだろう。
 

お題『日差し』

6/26/2024, 4:30:21 PM

君はいつも教室の隅にいた。
卒業式の後、謝恩会会場で君を探した。その時も壁沿いを先に探した。
「どったの?誰探してる?」
友人に聞かれて、君の名前を告げると、謝恩会は欠席だと言われ、がっかりしたことを覚えている。
だから、君に最後にあった日、いや、君を最後に目撃した日は高校の卒業式だ。

あれから10年が過ぎた。
君は元気なのだろうか。

朝食を食べながら、君のことを思い出していた自分が不思議だった。


「本日からこちらでお世話になります。よろしくお願いします」

目の前にいるのは君のような、君じゃないような。
なんだか、不思議な気分だ。


お題『君と最後に会った日』

6/17/2024, 2:38:39 PM

「どーしてこうなったわけ?」
尋ねられた複数の男女が口々に理由を言ってくるが、何も信憑性のない話しだ。ここにいる人間全員酔っ払いか。
俺がくる前に、全員出来上がるとはヒドイやつらだ。
しかし、たかだか2時間でこの惨状とは。一体どんだけ飲んだんだよ。

「あー遅かったね。おっつかれー。今日はみんなでこれから10年後、20年後どうしたいか話してたんだよ。」
「俺にはここにいる全員が酒に飲まれる未来しか見当たらないが」

俺は一体、この後どこまで介抱したらイイんだろう?


お題『未来』

6/15/2024, 11:55:46 AM

兎にも角にも暑い。
夏は終わったはずなのに、猛烈に暑い。
いつになったら、
「過ごしやすい!お昼休みの公園ランチ」
が戻ってくるのか、誰か教えて欲しい。

過ごしにくいからと言って、社内で昼休みをするという選択肢はわたしにはない。
昼休みなのに、電話応対、パワハラ取締役の対応、セクハラ上司との会話、そんな時間はまったく休憩じゃない。
昼休みは誰にも邪魔されず、ゆっくりごはんをたべて、ほっこり好きな本を読む時間だ。


誰にもこの幸せな時間を奪う権利はないはずだ。
季節よ。もう少しマシな気候にしてください。
そんなくだらないことを考えながら、手元の本を開いた。


お題『好きな本』

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