衣替え
好きなブラウスは、シワがないかチェックして、
合わないセーターは、今までありがとね、さようなら。
なんて、
なかなか衣替えさえ、思い切りよくできないのだけれど。
でも服だけじゃなくて、
私にとって要るものと要らないものを真剣に選び直したいと思う。
全部は抱えられないから。
大切にしたいから。
#65
声が枯れるまで
囁く声が聞こえるくらい、
きみはぼくのそばにいた。
きみの横顔を、
誰よりも近くで見るのはぼくだと、
決めつけていたんだ。
きみがその笑顔の下に、
どんな気持ちを隠していたかなんて、
想像もしないで。
昨日と同じ明日が来る保証など、
どこにもない。
当たり前だと思っていた日々は、
全部消えてしまった。
ぼくはきみの姿を見失い、
大声を出しても遠くて届かない。
どうかもう一度振り向いて。
声が枯れるまで、きみの名を叫び続けたら、
この声は届くかな。
どれだけ遠くても、きみが聞こえるまで。
#64
始まりはいつも
私の暮らしの中の、
はじまりはいつもとても小さなこと。
下ろしたてのスリッパの履き心地。
新しい香辛料の開けたての香り。
初めてのパン屋さんに行ってみたり、
夜に散歩に出かけてみたり。
もちろん旅行などもっと大きいことも、時々しんどいこともあるけれど。
そういう小さなはじまりは思ったより元気をくれて、くたびれた心に効いている。
#63
すれ違い
すれ違ってもいいと思うんだ。
それをそのままにするのか、わかり合う努力をするのか、そこが大事だよね。
だから努力するよ。
あの時、あなたはそう言って笑ってくれたね。私たちは大丈夫、ずっと続くと信じてた。
だけどあの面影は今はどこかに消えてしまって、私も見つけ出そうとは思わない。
終わりが見えていても、回避する力が私たちにはもう無い。
ただ終点へ流されていく。
多分、冬が来る前には。
#62
秋晴れ
見上げれば秋晴れの澄んだ空。
爽やかな風が金木犀の香りを運んできて、部屋の中まで甘い香りが漂っている。
隣町の秋祭りのお囃子の音も聞こえてきた。
何よりも新米の季節だ。ご飯を炊くのが楽しみになる。
お茶碗に盛られた熱々の炊き立てご飯を見れば、家族の歓声も上がる。つやつやピカピカのご飯は、どんなご馳走にも負けないくらいだもの。
こんな美味しいご飯が食べられるなんて、日本人で本当に良かったなあ。
そう思うのは私だけじゃないですよね?
(明太子で食べたいな。)
#61