百加

Open App
10/3/2023, 9:48:56 AM

奇跡をもう一度


 どうか、神様。
 公園のベンチに座った私は、心が千切れそうな思いに強く目を閉じる。
「奇跡なんて望んだことはなかったな」
 目を開けるとあなたは背中を向けて立っていた。
 その言葉に笑うべきなのか、泣くべきなのかわからない。そうだね、あなたは何でも自分の力で切り拓く、そんな人だもの。
 その時あなたは私を振り返った。
「……でもそれは僕が、奇跡をもう一度と願うほどの痛みを知らないだけだった」
 少し口ごもりながらあなたはそう言って、私の手をとり、強く握り締めた。



#45

10/2/2023, 9:03:46 AM

たそがれ


たそがれ時が、
見知った顔さえ見分け辛くなる時なら、
逢魔が時は、
見知った顔が別人に見えるほど、魔がさす時になるのだろうか。

「ねえ、どうしたの……?」
薄暗い中、ゆっくり振り返ったあなたの顔は、奇妙な暗い影が落ちてまるで別人のようで、そしてぞっとするほど禍々しく見えた。



#44

10/1/2023, 6:52:54 AM

きっと明日も


「また明日」
 そう言って夕方に手を振った友達とは、もう二度と会えなかった。
 そんな明日があるなんて、想像もしてなかったんだ。
 あの時何かできたのか、何度考えても答えはなくて、せめてとても大切だったと一言伝えたかった。

――きっと明日も。
そんなの誰にもわからない。今日と同じ明日が来る保証なんてどこにもない。

そのことを思い知った十七の秋。



#43

9/30/2023, 9:00:27 AM

静寂に包まれた部屋


静かだね。
静かだな。

出会って、恋して、傷ついて。
今はソファに並んで座り、目を見合わせて微笑み合う。
静寂に包まれた部屋に、コーヒーの香りだけが満ちている。
ここは誰にも邪魔されない二人だけの城。
今夜だけは。



#42

9/28/2023, 10:50:53 AM

別れ際に


いつも、
見えなくなるまで見送ってくれるよね。
振り返ると必ず手を振ってくれる。
きっと口元には微笑みを浮かべてる。

何気ない別れ際に、
言葉にしない思いがたくさん詰まっていて、
思い出すたびに、温かいもので胸がいっぱいになる。
――ありがとう。



#41

Next