「エイプリルフールについたウソって、一年間は叶わないらしいよ」
へぇ、とキミは興味なさげに相槌を打った。
「ウソは嫌い?」
「嫌いもなにも、嘘なんてつくべきじゃない」
「はははっ、相変わらず頑固だねえ」
私がそう返すと、キミは不服そうな顔をする。
素直に感情を出してくれることが嬉しくて、私は笑顔になってしまう。
そんな私の顔を見て、キミは更に嫌そうな顔をする。
「……笑うなよ」
「はははっ、ごめんごめん」
笑うことをどうにかこらえて、キミへ呼びかける。
「ねぇ」
「なんだよ」
「来年も、再来年も、その後もずーーっとこんな風に生きていたい!」
いきなり大きな声を出して私に、キミはポカンと口を開ける。
「それは嘘か……?」
「どうでしょう?キミが信じるほうでいいよ」
目をぱちくりとさせて少しの間キミは考えているようだったけど、やがて穏やかに言った。
「じゃあ、そう思っておくよ」
「えー?そう思うってどっち!?」
「秘密だよ」
普段はしないような、いたずらっぽい笑みを浮かべてキミがそんなことを言うから、なんだか心がふわふわしていた。
幸せになってください
なんて、一生願えないと思ってた。
それなのに、こんな、さいごに、
キミの不器用な笑顔を思い出しながら願うだなんて。
あーあ、失敗しちゃったなあ。
私もキミと幸せになりたかったけど。
そんな願いは叶わない。
だから、お願い。
手が触れる。
「……?」
「あ、悪い」
そう言って彼は腕を引いた。
公園のベンチで休憩をとっている最中、思いの外話が盛り上がった。
気づくと私たちの距離は近づきすぎていて、その結果、彼の手が私の手に触れた。
「ふふっ」
「なに笑ってるんだよ」
不思議そうに彼が問いかける。
「いや、縮まったなぁって」
「なにが」
「私たちのパーソナルスペース。出会ったころは二人ともこんなに近くなかったから」
「そういえば、そうかもな」
「……ありがとうね」
彼に聞こえないくらい小さく小さく呟いた。
こんなに誰かと触れ合えるなんて思いもしなかった。
キミもそう思ってくれてたらいいな。
心の中でそう祈った。