行きたくもない教室に収容され、
楽しくない勉学を強要される。
好きでない制服を身に纏い、
表面上の付き合いを要求される。
生まれてからずっと雁字搦めにされている。
自由だった事はあっただろうか。
今だって、生きる事を親に強制されている。
心から生きたいと、一度でも思っただろうか。
外に出ると、冷たい風が頬を撫でる。
誰もいないビルの屋上は、僕を孤独にしてくれた。
命令してくる者が居なくなったような錯覚。
今なら何でも出来るような、そんな気がする。
超えることを禁じられているフェンスを跨ぎ、
片足を宙に投げ出してみる。
初めての感覚。僕は今満たされている。
自分の意思が許されたような、
解放されたような感覚。
ただ、嬉しかった。涙が出てきた。
手をフェンスから離し、全身で風を感じる。
これが幸せ。知れてよかった。
風に身をまかせ、足を前に出した。
暖かな空気が僕を優しく包み込んだ。
僕は今、やっと自由になれた。
ぼくは子供のままでいたかったんだ。
難しいことは深く考えないで、
気に食わなかったら駄々をこねて、
嫌な事があれば泣き叫べるんだ。
自分に正直に生きられる子供のままで、
感情の起伏が激しくも無邪気なままで、
周りに素直に助けを求められるままで、いたかったな。
大人にならないといけないんだよ。
僕はもう大人になってしまったよ。
自分を殺して、周りの為に動き、
誰にも頼れない孤独な人間になってしまった。
常に愛想笑いを浮かべ、他人を過度に気遣い、
いつの間にか喜怒哀楽が壊れてしまっていた。
私はいつから、泣けなくなったのだろうか。
人目も気にせず、花に囲まれた君に向かって愛を叫ぶ。
大好きだ。大好きなんだ。愛しているよ。
知っている愛言葉を、これでもかと。
今まで言えなかった分、全て出し切ろうと。
煙で喉が痛んだって叫び続ける。
君に届くように。灰になる前に。
過去形になんてしてやらないよ。
棺に入った君も、愛してるから。
私の初恋とは、視界が悪く霧がかった日に出逢った。
歩き慣れた道を、人だかりが塞いでいて。
響き渡る怒号。甲高い悲鳴。遠くからはサイレンの音。
まるで異世界かのような光景は、
場違いにも私の胸を高鳴らせた。
人混みをかき分けると、小さな交差点。
大きなトラックの下には真新しい血痕。
視線を下に移すと、そこには人がいた。
未だ出ている血。折れ曲がった手足。
赤黒い血肉から見える真っ白な骨に、
私は思わず見蕩れてしまった。
あの白い輝きを今でも忘れられなくて。
きっとあれが私の初恋。
悲痛な事故が起こった、私の初恋の日。
明日世界が終わるなら、貴方を殺しに行きましょう。
貴方を嫌っている訳では無い、恨んでいる訳でも無い。
ただ、愛しているから。
世界が終わる理由はなんであれ、
私以外に貴方が殺されるなんて考えたくもないのです。
貴方の鼓動を最期まで聞き、
貴方の首に手をかけるまで、
貴方の死に様を見送るまで、
私は死んでも死にきれない。
欲を言えば、私も貴方に殺して欲しいのだけれど。
貴方は私の首に手を添えてはくれないだろうから。
世界の結末を、死体の貴方と迎えるのも悪くない。