私の初恋とは、視界が悪く霧がかった日に出逢った。
歩き慣れた道を、人だかりが塞いでいて。
響き渡る怒号。甲高い悲鳴。遠くからはサイレンの音。
まるで異世界かのような光景は、
場違いにも私の胸を高鳴らせた。
人混みをかき分けると、小さな交差点。
大きなトラックの下には真新しい血痕。
視線を下に移すと、そこには人がいた。
未だ出ている血。折れ曲がった手足。
赤黒い血肉から見える真っ白な骨に、
私は思わず見蕩れてしまった。
あの白い輝きを今でも忘れられなくて。
きっとあれが私の初恋。
悲痛な事故が起こった、私の初恋の日。
明日世界が終わるなら、貴方を殺しに行きましょう。
貴方を嫌っている訳では無い、恨んでいる訳でも無い。
ただ、愛しているから。
世界が終わる理由はなんであれ、
私以外に貴方が殺されるなんて考えたくもないのです。
貴方の鼓動を最期まで聞き、
貴方の首に手をかけるまで、
貴方の死に様を見送るまで、
私は死んでも死にきれない。
欲を言えば、私も貴方に殺して欲しいのだけれど。
貴方は私の首に手を添えてはくれないだろうから。
世界の結末を、死体の貴方と迎えるのも悪くない。
君と出逢って、どうやら僕はおかしくなってしまった。
いつの間にか君を目で追ってしまうし、
気が付けば君の事で頭がいっぱいになる。
こんなこと今までになかったのに。
君と目が合う度に、胸が高鳴ってしまうんだ。
そのうち、目が合うだけじゃ物足りなくて。
話したい、手を繋ぎたい、体を貪りたい。
初めての衝動。過激な肉欲。
理性の敗北。本能の目覚め。
自分が自分でない気がした。
それなのに、何よりも自分らしいと感じた。
僕の性なのかな。君を求めてしまうのは。
君の所為なんだ。僕が狂ってしまったのは。
私が好きなのは彼じゃないし、
彼が好きなのも私じゃないの。
私の好きな人は、私を好きじゃなくて。
彼の好きな人も、彼を好きじゃない。
だから、って言葉では説明出来ないけど。
今はただ、私と彼が付き合ってるってだけ。
おかしな話でしょ?
そんなこと、私たちがいちばん分かってる。
愛してるのに、愛されないのが辛かった。
それだけなの。それが一番苦しかったの。
これは、二人だけの秘密。そして罪。
どうか責めないで。どうか許さないで。
弱くて惨めで最低な私を、私たちを、
どうか、愛して欲しかっただけなの。
退屈な授業。睡魔が襲う午後。
下敷きを挟んだ白紙の帳面。
目を移す。
鳥の群れ。目を焼く日差し。
今しがた引かれた飛行機雲。
刹那、大きな影。
窓の向こうと目が合った。
鈍い音と甲高い悲鳴が耳の奥を支配する。
不快感と非日常な空気が教室を包み込んだ。