ねぇ、それ、何?
初めて君のおうちに招待された時、棚の間に置かれていた箱。
気になって聞いたら君は、
なんでもないよ。
なんて言ってさ。机の上をそっと触るから。
何かなって思って見てみたら、鍵。
君のいないとき、そっと開けたら、
写真。
女。君が腰を抱いている。女。
そう、そういう事。
昔の女の記憶を、大事に持ってるのね笑
許さない。
#君が隠した鍵
7月の終わり、夏が澄み始める頃。
僕は、彼女のお気に入りのワンピースを、リップを、グラスを、お皿を、未だに捨てられずにいる。
写真の中の彼女は、笑ったまま、ずっと言葉を返さない。
僕が犯した罪。誰にもバレなかった。
僕がそうした癖に、僕は君の痕跡を消せずにいる。
君の、心も、身体も、呼吸すらでさえ、誰かのものになるなんて許せなくて。
全部、全部、僕の物だ。
君の好きな香りは、僕だけが知ってればいい。
君の好きな食べ物は、僕だけが知ってればいい。
君の本当に好きな人は、僕だけが知ってればいい。
君と過ごせなかった8月を、また今年も一緒に過ごす。
僕と彼女は、僕が君を“永遠”にしてからずっと、すぐに会える距離にいる。
世界はもう、僕と彼女の世界に、知らないふりをしている。
冷蔵庫には彼女と、彼女の好物が、いつまでも減らずに並んでいる。
#8月、君に会いたい
導かれるまま、1本の光を辿り、歩き続けていた。
どれくらいだっただろう。
突然現れる強い光。
「ん゛、ま、ぶし、、」
『ぁ、.ᐟ ぉ、起きました.ᐟ.ᐟ.ᐟ すいません.ᐟ 起きました.ᐟ 』
『おはよ。長かったね。おかえり。』
そう言って微笑む僕の恋人。
どうやら僕は、3年ほど昏睡していたらしい。
事件当時のことはうっすらとしか覚えていない。
今、僕は、ベット傍で泣きながら微笑む彼女を見つめている。
愛おしい。なんて感じながら。
殴られた最後に見た眩しい光に包まれた、彼女を。
は¿
そうだ、そうじゃないか。
僕をこんな状態にした彼女を、どうして忘れていた¿
眩しさで目覚めて、彼女を眩しいほど愛おしく感じて。
事件当時のことを、
朝日の眩しさで思い出すのは、なんて皮肉か。
#眩しくて
僕は物心ついた時から特になにかに打ち込んだことは無い。
そんな僕が見つけた、一筋の光。
君を見た時に感じてから1度も冷めやらぬ、
#熱い鼓動
人生はタイミングである。
タイミングがずれると悪いことが起こる。
彼女と出会ったこと。
子をもうけたこと。
突然現れた元カノに頬を打たれたこと。
子供が俺の不注意で死んだこと。
妻が後を追ったこと。
俺は生まれてこの方、タイミングがずっとズレている。
#タイミング