患者さんが手のひらに乗せてくれた手紙が、今まで貰った中で1番の贈り物だなと思う。退院後、どうかあなたの生活が安心して過ごせるものでありますように、健康でいれる日が1日でも長くありますようにと日々願っている。私の顔や名前を忘れてもいい。それよりも貴方が今大事にしていることを覚えて幸せに生きていてほしい。私が貴方を覚えておくからまたふとした時に病院の外で会えたら声をかけさせて下さいね。
昔の恋人の話を聞いて、あの人が私をちゃん付けで呼んでいたことを思い出した。芸能人の元彼が別れた後に攻撃的になり炎上しているのが流れてくる度、私の恋人は私を言葉や暴力で殴りにきていないなと思って、そんなところに少しだけ愛しさをおぼえる。1度交わった縁はまだ心の隅の方に残っていて、それはもうめったに心の真ん中にくることはないんだけれど。それでも貴方が真ん中にいた時はあったなぁと思いながら帰路に着いた。
「昨日夢に出てきたよ」と言われたら私は嬉しいのに、彼にそう言っても「なんで?」と返ってくるだけだ。私が貴方を思い浮かべる数が多いからだと言うのは癪なので、彼から「昨日夢に出てきたよ」と言われるのを待っている。
ご飯いっぱい食べてね、でも無理して食べなくていいからね。お風呂ゆっくり浸かってね、肩まで沈めて。暖かくして寝てね、いい夢みてね。という言葉でしか愛しさを伝えられない。大切な人達、どうか幸せに1日を過ごしてください。私のいない所で勝手に好きなように生きて各々幸せでいてください。
深夜3時。朝から仕事があるから早く寝なければと思う度に目が冴え少しの音にも意識を向けてしまう。諦めて一服しようとベランダへ向かい、冷えた空気に肌を刺されながら火をつけ顔を上げる。いくつかの家やマンションの窓は灯りがついていて、それに少しだけほっとする。私だけが眠れないわけではないのだ。
眠れない貴方も、私も夜景の一部になっている。